2010年11月 4日(木)

"ああしたい""こうしたい"を実現する「元気玉プロジェクト(仮)」~伊勢谷友介のREBIRTH論に迫る(6)

「REBIRTH」の思想は、自らが演じた幕末の志士や白洲次郎氏の生きざまの影響を受けていると語った伊勢谷さん。今回は、その思いを胸に、今後どのような活動をしていくのかを伺いました。


「REBIRTH PORJECTの方向性として、社会全体を包むネットワークの中にきちんとプロジェクトを乗せたい」と語る伊勢谷さん

片岡:では、「REBIRTH PORJECT」の今後の具体的な活動も、少し紹介していただいていいですか?

伊勢谷:具体的な方がいいですか?

片岡:うん、近々の映画の話もちょっとお願いしたい。

伊勢谷:そうですね。映画はもう3年ぐらい前からですね。実は最初資本面などの問題で、全部頓挫したんですけれど。でも、愛着を持っていたので、脚本をもう1回自分で書いて粘って。それを今まで引っ張って、原作料も払いながら、で、やっと今回、撮れる機会をもらったんです。それが辻内さんという方が書いた、『セイジ』。「本屋さんが泣ける本」に、選ばれた短編なんですけれど、それをまず今年9月半ばに撮ることになっています。
今度アクタスさんという家具のメーカーさんと「REBIRTH PROJECT」の「スパイクショー」のほうでちょっとお仕事をさせていただくことになっていますね。
ほかにも、いろんなところからお声がけいただいているのですが、僕の中でこれから、大きいプロジェクトの展開の形、方向性として、社会全体を包むネットワークの中にきちんとプロジェクトを乗せたいという想いもあります。僕の勝手なイメージなんですけれど、ドラゴンボールの悟空がみんなから元気を集めて元気玉をつくるんですよね。そんな元気玉のイメージで、プロジェクトを発足できるようなウェブサイトのようなものを発足させたくて。その前段階として僕らが今取り組んでいるのが、マッチメーカーという、各ブランドにREBIRTHをはさんで製品化していったり、それを売っていくというものですね。それを47都道府県の中でいろいろやれたらなと。そういう残すべき、提案すべきというものを、僕らがサンプルつくりながら、みんなに見てもらいたい。「自分だったら、こうしたい」「ああしたい」というのをウェブ上でアップして、思った人はそこに課金していけるようなシステムというのは、今後必要だと思うんですよね。


Rebirth ProjectとデニムブランドLeeが立ち上げるリユースブランド「LeeBIRTH PROJECT」。
倉庫で眠っていた型落ち品を再生したアイテム

片岡:それは楽しそう。47都道府県ですね。「REBIRTH PROJECT」というブランドが認知されていくに従って、その活動は重要さを増すんじゃないかな。
個人がそれぞれやっていることなんだけれども、それが横のつながりとして網の目のようにネットワーク化されることで一つになり、それによって全国的な認知度が高まっていくと思うんです。その意味では、伊勢谷くんの俳優としての知名度はとても重要。それが個々の存在のつなぎになる。そのことが「REBIRTH PROJECT」のやろうとしていることにとって、ものすごく、いい意味で役に立つというか。
例えば、去年、「アイ・ウェイウェイ展」という中国人のコンセプチュアル・アーティストの個展を森美術館で開催したんです。
彼は、人権活動をしているんだけれども、自分は著名な詩人を父に持っていることもあって、ある意味でアートセレブリティになりつつあったりする。「そういうことと、人権活動をしているということは、どういうふうにバランスするのか?」という質問をされたときに、「自分が持っているセレブリティのようなものによって、自分がやっている人権活動が、より認知されるのであれば、そのセレブリティを使わない手はない」と言っていて。
だから、例えば坂本龍一さんがエコロジカルな活動をしたりすることで、そういう活動が格好いいと思えるようになったり、注目をされるようになることというのは、すごく重要なことだと思う。

伊勢谷:はい。

片岡:だから、伊勢谷さんの俳優としての活動などからも国民からの認知度が上がっていくことで、結果的には「47都道府県で何かやって、マッチメーキングをしていこうとしている」ということがフューチャーされるんじゃないかな。それはもちろん本人が楽しんでいないと多分続かないしね。単なるエゴということじゃなくて、みんな、「あの伊勢谷さんがやっていることだったらやろう」というようなことにつながっていくんじゃないかなと思っています。

伊勢谷:ありがとうございます。やっぱり、その考えは僕の中にもあったんですよ。

≪次回 第7回 何足のわらじでも履いてやる へ続く≫
 

【伊勢谷 友介】
1976年東京生まれ。1994年東京芸術大学入学後、1997年よりアートユニット「カクト」として制作活動を開始。1999年俳優としての活動も開始。2002年東京芸術大学大学院卒業。2003年「カクト」(劇場公開映画)を監督。2008年株式会社「REBIRTH PROJECT」設立。
 

<関連リンク>
・連続対談:伊勢谷友介のREBIRTH論に迫る
第1回 「ネイチャー・センス展」と「REBIRTH PROJECT」が共にする想い
第2回 「復活(REBIRTH)」とは人間が本当の意味で「考える葦」になること
第3回 47都道府県の失われゆく技術にもう一度光を当てる
第4回 俳優、アーティスト、事業家...伊勢谷友介の目指す姿とは?
第5回 白洲次郎を演じるなかで浮かび上がった新たな思い
第6回「ああしたい」「こうしたい」を実現する元気玉プロジェクト(仮)
第7回 何足のわらじでも履いてやる

「ネイチャー・センス展: 吉岡徳仁、篠田太郎、栗林 隆
 日本の自然知覚力を考える3人のインスタレーション」

 会期:2010年7月24日(土)~11月7日(日)

カテゴリー:01.MAMオピニオン
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