2013年7月10日(水)

ロバート・インディアナ《ラブ》 & ギムホンソック《ラブ》
1分でわかる「LOVE展」~アーティスト&作品紹介(11)

ロバート・インディアナは戦後のアメリカ美術を代表するアーティストのひとりです。現在開催中の「LOVE展:アートにみる愛のかたち」では、インディアナの代表作《ラブ》と韓国からアメリカに批判的な眼差しを向けていたギムホンソックの《ラブ》を展示しています。2つの作品の対比をお楽しみください。

サインの画家ともいわれるインディアナは、交通標識や店舗サインの意匠を援用しながら、記号、抽象、言語などの美術における実効性を模索してきました。なかでも「O」のみが斜体の「ラブ」シリーズは、ニューヨーク近代美術館の1965年のクリスマスカードのために描かれ、その後、シルクスクリーン、絵画、彫刻など多様なメディアで展開され、彼のアイコン的作品となりました。アメリカ美術の戦後史においても代表的な作品のひとつです。

教会で見た「神は愛である」という言葉に着想を得たといわれる本作は、1960年代当時のアメリカを象徴する「LOVE & PEACE」とも共鳴するものでした。また、赤、青、緑の鮮やかな色彩構成は、父親が働いていたガソリン・スタンドのロゴと故郷の青空に由来します。世界各地にパブリック・アートとして設置されている彫刻バージョンは、日本では新宿アイランド(西新宿)で見ることができます。


ギムホンソック
《ラブ》
2012年
自動車用塗料、ステンレス鋼
200×200×82cm

ギムホンソックは、社会や人々の意識に批評的なまなざしを向け、しばしばユーモアをまじえながら、彫刻、映像、インスタレーションなど多様なメディアを用いて表現します。

本展出品作の《ラブ》(2012)は、ロバート・インディアナの《ラブ》のイメージをあえて歪めた形状の彫刻です。韓国から見たアメリカという国の存在や、アメリカン・アートへの皮肉に留まらず、あらゆる分野に通底する「完璧さ」や品質に対する信仰に向けてもギムはその正当性を問いかけています。また、LOVE(愛)の象徴する歪められた「LOVE(愛)」は、まさにこの普遍的で根源的なテーマの複雑さや多面性を示唆しています。
 

<関連リンク>

六本木ヒルズ・森美術館10周年記念展
「LOVE展:アートにみる愛のかたち-シャガールから草間彌生、初音ミクまで」

2013年4月26日(金)-9月1日(日)

・1分でわかる「LOVE展」~アーティスト&作品紹介
(1)ジェフ・クーンズ《聖なるハート》
(2)ゴウハル・ダシュティ「今日の生活と戦争」シリーズ
(3)ナン・ゴールディン「性的依存のバラッド」シリーズ
(4)ジョン・エヴァレット・ミレイ《声を聞かせて!》
(5)フリーダ・カーロ《私の祖父母、両親そして私(家系図)》
(6)ジャン・シャオガン《血縁:大家族》
(7)草間彌生《愛が呼んでいる》
(8)シルパ・グプタ《わたしもあなたの空の下に生きている》
(9)初音ミク《初音ミク:繋がる愛》
(10)アルフレド・ジャー《抱擁》
(11)ロバート・インディアナ《ラブ》 & ギムホンソック《ラブ》
(12)ソフィ・カル《どうか元気で》
(13)シャガール、マグリッド、フランシス・ピカビアらが描いた恋人たち
(14)トレイシー・エミン《あなたを愛すると誓うわ》
(15)デヴィッド・ホックニー《両親》
(16)デミアン・ハースト《無題》

カテゴリー:01.MAMオピニオン
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