2015年9月 9日(水)

語られることのなかった物語~ディン・Q・レ作品紹介#6
《光と信念:ベトナム戦争の日々のスケッチ》

ディン・Q・レの作品を紹介してきた本ブログも、連載最終回となりました。最後に解説するのは、《光と信念:ベトナム戦争の日々のスケッチ》です。
「ディン・Q・レ展:明日への記憶」は、10月12日(月)まで。ぜひ森美術館へ足をお運びください。

《光と信念:ベトナム戦争の日々のスケッチ》

壁に掛かる100点のスケッチは、ベトナム戦争の際に北ベトナムの兵士とともに従軍した画家たちによって描かれたもの。そこには悲惨な光景はなく、兵士や市民の何気ない日常が描かれています。これらの絵に興味をもったディン・Q・レは、画家たちを訪ね、彼らが経験した戦争についてインタビューしています。その話からは、熾烈な戦いが続く日々においても、平和で楽しい時間があったこと、肖像を描かれることが兵士にとって慰めになったことなどが伝わってきます。
 戦争の記憶は、ステレオタイプなイメージとして一括りにされがちです。しかし、この作品に現れる一人ひとりの声を通して、悲しみや喜びなどさまざまな感情に彩られた人生のありさまが浮かび上がってきます。

文:荒木夏実(森美術館キュレーター)


《光と信念:ベトナム戦争の日々のスケッチ》
2012年
100点のドローイング:鉛筆、水彩、インク、油彩、紙/シングルチャンネル・ビデオ、カラー、サウンド
サイズ可変、35分
所蔵:カーネギー博物館、ピッツバーグ


展示風景:「ディン・Q・レ:明日への記憶」森美術館、2015年
撮影:永禮 賢
 

<関連リンク>

ディン・Q・レ展:明日への記憶
会期:2015年7月25日(土)-2015年10月12日(月)

・語られることのなかった物語~ディン・Q・レ作品紹介
(1)「フォト・ウィービング」シリーズ
(2)《農民とヘリコプター》
(3)《抹消》
(4)《南シナ海ピシュクン》
(5)《人生は演じること》
(6)《光と信念:ベトナム戦争の日々のスケッチ》

カテゴリー:01.MAMオピニオン
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