トークセッション/MAM×RIKEN サイエンスセミナーレポート アニュアルカクテルパーティー MAMCナイト

トークセッション/MAM×RIKEN サイエンスセミナーレポート

MAM×RIKEN サイエンスセミナーレポート(PDF)

本アーカイブは、森美術館の「医学と芸術展:生命(いのち)と愛の未来を探る−ダ・ヴィンチ、応挙、デミアン・ハースト」に合わせて開催されたパブリックプログラム(トークセッションおよびMAM×RIKEN サイエンスセミナー)記録です。同プログラムは、独立行政法人理化学研究所の協力により企画、実施されました。

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メンバー限定「アニュアルカクテルパーティー」リポート

森美術館のメンバーシップ・プログラム「MAMC(マムシー)」。その会員のベネファクターとフェローを対象・ノした、年に一度のイベントが「MAMCアニュアルカクテルパーティー」です。今年は2009年12月8日(火)の夜、森美術館閉館後のギャラリーを貸し切って開催しました。

まず、パーティーの前にプレ・ギャラリートークと称して、「医学と芸術展」を担当した森美術館プロジェクト・マネージャー広瀬麻美が、展覧会解説ツアーを実施。そこで紹介されたのは……

広瀬麻美によるギャラリーツアー
 

現在、「医学」と「芸術」は全く別の分野で発展を続けているが、かつては両者の境界が無かった――ということがよく分かる、「絵画」として描かれた「解剖図」の数々。蜷川実花の写真が施された美しい「義足」や、人間の脳波を感知して思い通りに動かせる「車椅子」、最先端の細胞培養技術による実験的な作品など。「医学」と「芸術」の垣根を越えたさまざまな作品が取り上げられました。

プレ・ギャラリートークの後は、隣のパーティー会場へ。そこは、普段は大型の映像作品などを上映している展示室。この日は特別に、大きなテーブルを運び込んでパーティー用のセッティングをしました。MAMC名誉会員のフランソワーズ・モレシャンさんと日比野克彦さんも駆けつけてくださり、華やいだ雰囲気の中でパーティーは始まりました。

館長、南條史生のスピーチに続いて理事長の森佳子が乾杯の挨拶をすると、早速各テーブルから賑やかな歓談の声が広がります。初対面でも、MAMCメンバー同士ならアート談義で盛り上がるのに時間は掛かりません。

会場が和んできたころ、チーフ・キュレーターの片岡真実が、2010年に開催する展覧会のラインナ・bプの紹介をしました。2010年は「日本を再定義する」をテーマに、日本の若手注目アーティストが続々登場しますので、ぜひご期待ください。

そしてこの日の特別プログラムは、「日本フィルハーモニー交響楽団」の演奏者による弦楽四重奏サロン・コンサート。正装した演奏者がステージに上がると、会場の空気が張り詰め、皆、固唾をのんで最初の一音を待ちます。

参加者と歓談する南條館長
日本フィルハーモニー交響楽団メンバーによる弦楽四重奏

今回の選曲は「医学と芸術展」のテーマである「生命」や「愛」に因んだもの。「春」(作曲:ビバルディ)や「愛の挨拶」(作曲:エルガー)など、耳に馴染みのある名曲が次々と演奏されました。そんななか、オペラの名曲「誰も寝てはならぬ」(作曲:プッチーニ)が、「イナバウアーの曲です」と紹介されると、会場は緊張がほどけて笑いの声も。

格調高い音色のなかにも、サロン・コンサートらしく親しみのある、素敵な演奏会でした。アンコールはでこの時期ならではの「ホワイトクリスマス」が披露され、約30分間の演奏を締めくくりました。

演奏に続いて行われたサプライズの抽選会では、日本フィルハーモニー交響楽団がご提供くださった「ベートーヴェン第九交響曲 特別演奏会」のペア招待券が、幸運な3名の手に渡りました。

最後に、ジェネラル・マネージャー高橋信也が、この一年のメンバーの皆さまのご支援に対し、感謝の言葉を述べて、パーティーは終了。

MAMCではこのように、メンバーの皆さまに、展覧会を通してさまざまなアートの楽しみ方をご提案するプログラムをたくさん実施しています。

次回のメンバーイベントは、2010年1月19日開催の「MAMCナイト」。これはメンバー限定のスペシャルなギャラリートークで、一般のギャラリートークとはちょっと違った視点から、展覧会の裏側をご紹介します。現在、MAMCメンバーを募集していますので、まだMAMCメンバーでない方は、ぜひこの機会にご検討ください。



メンバー限定MAMCナイト「展覧会の舞台裏トーク:女王陛下の“ダ・ヴィンチ”がやって来た!」

展覧会毎に1回、貸切で開催しているMAMCナイト。森美術館のメンバーシップ、MAMCの会員の方だけが参加できるこのイベントを、今回は2010年1月19日(火)の夜に行いました。

1月という寒いうえに新年会の時期にもかかわらず、100名程の方がお越しくださいました。集まったのは、カジュアルなスタイルの方から、スーツ姿の方、デートを楽しむカップル、おしゃれにドレスアップした方など、年齢も性別もさまざまでしたが、“アートに興味”があることは共通。大勢にもかかわらず、みなさん和気あいあいとギャラリーをまわってくださいました。

【作品の背景や裏話が満載のギャラリートーク】
まず第1部として、本展を企画したキュレーターであり、森美術館プロジェクト・マネージャーでもある広瀬麻美によるギャラリートークを実施。作品の歴史的背景や裏話を披露しました。

どんなお話をしたかというと、例えば――ダ・ヴィンチの作品に書かれた文字は、一時期「暗号」のようにわざと読みづらく書かれたと考えられていました。しかし実は、ダ・ヴィンチが左利きで「右から左」に「鏡文字」で書くほうが、彼にとって自然なだけだったのです。

こうしたエピソードで、みなさん、作品にグッと親しみやすさを感じてくださったようでした。

広瀬の解説を熱心に聞くメンバー

【キュレーターだけじゃない。「コンサヴァター」の仕事とは?】
第2部では“コンサヴァター”相澤邦彦の仕事を紹介しました。コンサヴァターというのは、一言でいえば美術品の保存と修復をする人のこと。“修復家”は主に作品が傷んだり、壊れた後にケアする専門家ですが、コンサヴァターは修復もしますが、それ以前に、修復する事態に至らないように作品をケアするのが大切な仕事です。

例えば館内の湿・温度。これらは急激に変化すると作品を傷めてしまいます。そのため壁に空調センサーを貼り付け、24時間監視し、一定の湿・温度に保っています。無線式の空調センサーは移動できるため、ダ・ヴィンチのように重点的にケアしたい作品のそばに置いています。ほかにも虫対策や地震対策などさまざまなケアをしていますが、どれも目立たないよう工夫しています。それは、物理的に作品を守ることに特化するあまり、作品のコンセプトが損なわれるようなことがあってはならないと考えているからです。

作品を守りながらも、観賞を妨げない――そんな普段は知ることのできない、まさに“展覧会の舞台裏”の仕事に、みなさん興味深そうに耳を傾けていました。

この相澤のトークは、後日「森美術館公式ブログ」に詳しく掲載しますので、あわせてご覧ください。

修復家の重要な役割について語る相澤

撮影:御厨慎一郎

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