2N・S・ハルシャの絵画の特徴は、モチーフの「反復」

N・S・ハルシャの絵画の特徴は、一つの作品に人物や動物などのモチーフが反復して描かれている点です。同じような個体が整然と並ぶ様子は、遠目で見ると一つの集団を形成しているように見えますが、細部に寄ってみると、表情、しぐさ、衣服など全てが異なり、それぞれの特徴が浮かび上がります。それは、一つの国家でありながら、多言語、多宗教、多文化で構成されたインドの多様性を映し出しているようにも、また一方で、どこの国にも当てはまる世界の縮図のようにも見えてきます。
全体と部分、集団と個人といった、相対的な視点を合わせ持ったN・S・ハルシャの絵画には、世界を客観的に見つめる観察者としての姿勢が反映されています。

スタイルを確立する契機となった作品

3点組の絵画《私たちは来て、私たちは食べ、私たちは眠る》(1999-2001年)は、N・S・ハルシャが、人々を多数並列して描くスタイルを確立する契機となった作品です。出産から死まで、人生の多様な段階が、移動する、食べる、眠るといったきわめて基本的で日常的な行為を通して描かれています。

《私たちは来て、私たちは食べ、私たちは眠る》(部分)
1999-2001年 合成樹脂絵具、キャンバス
172.1×289.3cm、169.7×288.5cm、172.2×289.2cm
所蔵:クイーンズランド州立美術館、ブリスベン