2016年9月 5日(月)

さまざまな視点から「宇宙と芸術展」と星空をみてみよう!
小中学生プログラム「サマーナイト・ミュージアム」レポート

夜の美術館を貸し切りで体験し、「宇宙と芸術展」鑑賞と星の話を聞いた後、六本木ヒルズ森タワーの屋上 スカイデッキから星空観察をする今夏の特別なプログラム、サマーナイト・ミュージアム「“宇宙と芸術展”と“星空”をみよう!」を2016年8月9日に開催しました。
25名の小中学生は保護者の方と一緒に少し緊張した面持ちで、閉館した後の森美術館へやってきました。夜の美術館はいつもと違った静かな雰囲気で、作品がぐんと身近に迫ってきます。まずは森美術館スタッフと一緒に展覧会を鑑賞しました。

最初に現れたのはいくつもの曼荼羅図。この曼荼羅図の中に北斗七星があったり、昔の人が想像する宇宙が描かれていたり、不思議な世界観に子どもたちも静かに見入っていました。江戸時代の国友一貫斎が作った精度の高い望遠鏡と、月や太陽の黒点を観察した様子、竹取物語絵巻、ダ・ヴィンチやガリレオ・ガリレイが宇宙について考えた手稿などの作品を、なぜそれが貴重なもので、本展に出展されたのか、説明を聞きながら進んでいきました。

大きな現代アートの作品も、他にお客様のいない自分たちだけの空間でみると圧倒的なスケールで体感できます。日時計をもとに時間の概念を作品にしたコンラッド・ショウクロスの作品や、巨大な太陽エネルギーをモチーフにしたセミコンダクターの作品など、子どもたちが初めて見る現代アートが続きます。

アーティストがどう宇宙からインスピレーションを受けて作品制作に取り組んだのかを紐解きながら、ひとつひとつ見ていきました。「宇宙人っているのかな?」と素朴な疑問から、「この星座は知ってる!」「流星刀がおもしろかった」など色々な感想が飛び出しました。最後はチームラボの作品を参加者だけで体験し、あたかもみんなで宇宙遊泳をしているような感覚に。

フワフワとした感覚のまま、次は着席をして高梨直紘先生から星のレクチャーが始まります。この後、スカイデッキにあがった時、星空にどんな星が見えるのか、事前に教えていただきました。今現在では、宇宙というと、国際宇宙ステーションや宇宙開発、研究というものをイメージし、宇宙と芸術という組み合わせは想像しにくいかもしれないが、歴史的にみると宇宙と芸術、宗教、哲学、思想はすべて同じ根っこから始まっていたとのこと。昔の人は天変地異という言葉のとおり、天で起きていることが地にも影響して起きている、天と地は密接な関連性があると考えていました。地上で起きることを予測するために、天にまつわることをいち早く知ろうと、天文学という学問が発達してきたそうです。昔の人がどのように天を見上げ、星を見ていたのか、その追体験もおもしろいかもしれません。


高梨直紘先生

高梨先生が今日のために持ってきてくださった特別なMitaka(ミタカ)というソフトウェアで、今夜の星空を大きなスクリーンで見ていきます。まずは、北極星。時間を進めてもこの星だけは動かず止まって見えている特別な星です。その隣にはひしゃくの形をした北斗七星、おおぐま座の一部が見えます。織姫と彦星から天の川の位置も確認します。また、南の空を見ると、特に明るい星がふたつ確認できます。それは、惑星の土星と火星です。肉眼でも見える星の位置と見つけ方のコツを高梨先生に教わりました。惑星はまたたきがないので、ピカピカとせず、アンタレスというさそり座の一等星よりも明るい星が土星と火星だといいます。立体的に見る星空に、太陽を中心とした太陽系を俯瞰してみると、星座の世界と地球、太陽がどのような位置関係にあるのかが見えてきました。銀河系のスケールまで大きくして、銀河の地図をぐんぐん引いて見ていきます。現在、人類が読み解いてきた最新の宇宙地図では、約138億光年先に宇宙の果てがあることが分かっているそうです。

この後は、皆でスカイデッキにあがり、天体望遠鏡を使いながら思い思いに星を眺めました。レクチャーで教わった北極星から、土星や火星を見つけた参加者もいました。あいにく少し曇り気味の空で見えにくい部分もありましたが、「宇宙と芸術展」の展示を見て様々な想像を膨らませ、科学的、歴史的な宇宙を体系立てて学んだ後に見る星空はいつもよりも壮大に見えたでしょうか。今分かっている最先端の天文学と科学の力による宇宙を理解した上で、昔の人が宇宙をどう見ていたのか、また私たちはここからどのような想像を広げていけるだろうか、という思いが湧き起こりました。そんな思いから、実際の星空と「宇宙と芸術展」をもう一度見てもらえたら、また違ったように見えてくるかもしれません。

今回のプログラムは、最新の宇宙を知り、展覧会を違った角度から見てみることで、ひとりひとりが自分で星空を見た時に作品と実際の宇宙の関係に思いを馳せる夏の特別な体験となりました。「宇宙と芸術展」は2017年1月9日(月・祝)まで開催中です、ぜひ何度でも足を運んでもらえればと思います。

文:高島純佳(森美術館パブリックプログラム)
撮影:御厨慎一郎
 

<関連リンク>

宇宙と芸術展:かぐや姫、ダ・ヴィンチ、チームラボ
会期:2016年7月30日(土)-2017年1月9日(月)

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カテゴリー:03.活動レポート
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