長谷川 愛
《(不)可能な子供》
2015年
デジタルプリント
90 × 135 cm

長谷川 愛

Artist's Voice

ロンドンには同性婚をしている友人が数人いて、とある同性婚しているカップルと子供を持つ事の話しをしたときに、彼らは友人のレズビアンカップルと二人の精子を提供してそれぞれ一人ずつ子供を作ることを話していました。「君と○○の間だったらかわいい子が産まれるに違いないね!」そんな事を話す彼らは、彼ら二人の間に出来うる子供の話しを一切しませんでした。

私はちょうど長いこと付き合っていた男性と別れたばかりでした。長い時間をかけて鍾乳洞がぽたぽたとゆっくりとできるように、その彼との間に出来るであろう子供のイメージがぼんやりと頭の中に存在していたのですが、それがもう産まれることはないのだ、と思いました。もはやその存在が死んだことと同じに思えました。この時、彼らの子供は今現在の技術ではまだ作れないけれども、どんな子供が産まれ得るのか、という事を同性間でも占うことはできる、ということ事を考えました。それがこの作品のきっかけになりました。

その後リサーチしているとiPS細胞研究の先にはもしかしたら同性間でも子供をつくれるかもしれない、その技術使用に関して是か非か決めるのに重要なのは生命倫理という分野である、そんな記述を色々な関連本で目にしました。

誰がどのようにその技術の使用の是非を決めるのか?科学者や医者や専門家、もしくは政治家等の選ばれた一部の人達が決めてよいものなのでしょうか?彼らの倫理観は公平なものなのでしょうか?先入観や色眼鏡がそこに存在しないと何故いえるのでしょうか?

少なくとも、私は自分にも決定権が欲しい!と思いました。この作品は新しい技術が世に出て来たときに、誰がその是非を決めるのか、それを多くの人に解放したい、というところから制作しています。先入観や常識やそういうものに気づいて、改めて角度を変えて物事をみていくことが好きで、その楽しさをたくさんの人としてシェアしてみたいのです。


Artist's Topic

先日のMIT Media lab での《(Im)possible Baby》のNHKのドキュメンタリースクリーニングの様子。ゲストは「Sculpting Evolution」(進化形成)研究グループの遺伝子工学研究者ケビン•エスベルトさんと、MoMAのシニアキュレーターパオラ•アントネッリさん。この作品について参加者とディスカッション。

台湾での展示設営作業中。この展示も身体についてで、それはもう過激で知的で、それはもう面白い展示でした。《I Wanna Deliver a Dolphin...》という本作は、人間のかわりに絶滅危惧種の動物を代理出産できたら、という内容です。

アメリカのオフィス。窓際にこたつ。冬は寒くて日照時間が短いので、光を浴びつつあたたかくして論文や本を読んだりするスペース。

 

Artist's SNS

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“Roppongi Crossing 2016” Promotion Video