杉本博司(1948年生まれ)は、この30年間に世界のアートシーンにおける有数のアーティストとしての地位を確立してきました。彼の写真は、その完成された美によって私たちの心を瞬時に捉えます。また、時間、場所、文化や歴史を通して、物事の本質を追求する独自の視点は、つねに国際的な注目を集めています。
「杉本博司:時間の終わり」は、1975年から2005年に制作された杉本の代表的なシリーズが初めて一堂に会する回顧展です。森美術館で開催の後、ワシントンDCのハーシュホーン美術館・彫刻庭園ほかに巡回します。 現実と虚像の間を視覚が往来する《ジオラマ》や《ポートレート》、映画1本分の長時間露光による《劇場》、世界中の水平線を撮り続ける《海景》から、20世紀の代表的な建築を無限大の倍の焦点で撮影した《建築》、最近作の《影の色》、《観念の形》まで、新作・未発表作品を含む約100点を総覧いただけます。
また、写真や光から派生して、近年は建築空間にも強い関心を持つ杉本は《護王神社―アプロプリエイト・プロポーション》、《影の色》で被写体となる空間を自らデザインしたように、本展全体の展示デザインも手掛けています。 会期中《海景》を展示する漆黒の空間には、能舞台が配置され、杉本舞台美術による能公演も予定。 コラボレーションとして、サウンド・アートの分野で世界的に活躍する池田亮司によるサウンド・インスタレーションもお楽しみいただけます。 杉本博司の探求心と創造性の全貌を、「杉本博司:時間の終わり」で堪能していただけることでしょう。
[杉本博司(すぎもと・ひろし)]
1948年、東京生まれ。立教大学経済学部卒業後、1970年に渡米。ロサンジェルスのアート・センター・カレッジ・オブ・デザインで写真を学び、ニューヨークに移住。以降、ロサンジェルス現代美術館、メトロポリタン美術館、グッゲンハイム美術館、カルティエ財団など世界の著名美術館での個展のほか、数多くのグループ展、国際展に参加。1989年「毎日芸術賞」、2001年「ハッセルブラッド財団国際写真賞」受賞。現在、ニューヨークと東京在住。
杉本博司
《シロクマ》 1976
ゼラチン・シルバー・プリント
119.4×149.2cm
杉本博司
《カリブ海、ジャマイカ》 1980
ゼラチン・シルバー・プリント
119.4 X 149.2 cm
杉本博司
《グッゲンハイム美術館、ニューヨーク(建築家:フランク・ロイド・ライト)》 1997
ゼラチン・シルバー・プリント
149.2 x 119.4cm
杉本博司
《ヘンリー八世》 1999
ゼラチン・シルバー・プリント
149.2 x 119.4 cm
ドイツ銀行/グッゲンハイム美術館蔵
Commissioned by the Deutsche Bank in Consultation with the Solomon R.
Guggenheim Foundation for the Deutsche Guggenheim Berlin