展覧会

Mori Art Museum DIGITAL

2020.4.28(火)~ 6.30(火)

「MAMスクリーン」オンライン特別上映

「MAMスクリーン」シリーズの作品を特別に公開します。
開幕が延期になっている「MAMスクリーン013:ムニーラ・アル・ソルフ」から上映作品2作を一足先にお見せするほか、過去の作品をセレクトし、「MAMスクリーン」アンコール上映として期間限定でご紹介します。

■ 「MAMスクリーン」アンコール上映 *** NEW ***
「MAMスクリーン012:チェン・ジエレン(陳界仁)」
「MAMスクリーン 013:ムニーラ・アル・ソルフ」 先行公開


「MAMスクリーン012:チェン・ジエレン(陳界仁)」アンコール上映

「MAMスクリーン」アンコール上映の第1弾では、「MAMスクリーン012:チェン・ジエレン(陳界仁)」で上映された5作品《工場》(2003年、森美術館所蔵)、《ルート》(2006年、森美術館所蔵)、《残響世界》(2014/2019年)、《星図》(2017年)と《中空の地》(2017年)を限定公開します。

台湾を代表するアーティストであるチェン・ジエレン(1960年生まれ)は、これまで活動家や社会の周縁部に生きる人々との協働制作を要として、多くの映像作品を手がけてきました。いずれの作品も、過去の政権が推進した政策の遺物としての建築を主な舞台に、フィクションとアーカイブ映像を融合させながら、人間という存在の脆さや、尊厳とはなにかを問う劇的なルポルタージュとなっています。作品が喚起するのは、日本の植民地支配から戒厳令の布告、さらには経済政策としての新自由主義の推進に至るまで、台湾の激動の歴史を通して人々が経験したトラウマと苦難です。

チェン・ジエレンは、これまで台北市立美術館(2010年)、国立ソフィア王妃芸術センター(マドリード、2008年)などで個展を開催。サンパウロ・ビエンナーレ(1998年、2010年)、ヴェネチア・ビエンナーレ(1999年、2005年、2009年)、リバプール・ビエンナーレ(2006年)にも参加するほか、2018年にはアワード・オブ・アート・チャイナ(AAC)が選定する「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。


チェン・ジエレン《工場》

2003年
スーパー16ミリのDVD変換、カラー、サイレント
31分9秒
所蔵:森美術館(東京)

本作では、衣料品工場で労働に従事したのち職を失った女性たちが、稼働を停止したその工場で以前の職務を再演します。舞台となった工場は、1969年に設立され、台湾の産業と輸出経済の成長に寄与したものの、政府が市場の規制緩和と新自由主義的な貿易政策によって経済を再建してから10年後、1990年代半ばに閉鎖されました。投資家たちは、より安価な労働力のために業務の拠点を海外に移転するため、給料不払いのまま従業員を解雇したのです。チェンは、職を奪われたあと何年も抗議を続けていた元従業員の女性たちと2002年に出会い、彼女たちの窮状について話を聞きました。その対話から生まれたのが本作です。


チェン・ジエレン《ルート》

2006年
スーパー35ミリからのDVD変換、カラー/白黒、サイレント
16分45秒
所蔵:森美術館(東京)
日本語字幕:奥村雄樹

本作品の背景にあるのは、ネプチューン・ジェイド号事件と呼ばれる国際的な港湾労働者運動です。1995年の英国では民営化政策の影響で、労働組合に加入していたリバプールの港湾労働者が大量解雇されました。それを受けて世界各地の沿岸部では、国際港湾倉庫労働組合(ILWU)の主導により、国境を越えたストライキが展開されます。
チェンは、この国際的な連帯からインスピレーションを受けて、現在の高雄港において実際の労働者たちと協働し、擬似的な抗議行動を秘密裏に実施しました。たとえ虚構であっても、そこから伝わってくるのは、時間や距離を越えて連帯を願う港湾労働者たちの姿です。


チェン・ジエレン《残響世界》(シングル・チャンネル・エディション)

2014/2019年
ビデオ、白黒、サウンド
59分47秒
日本語字幕:奥村雄樹
日本語字幕協力:岩切 澪

本作品は、日本統治時代に台湾に設立されたハンセン病患者のための療養所「楽生院」を舞台としています。台湾におけるハンセン病患者の分離政策は、日本統治が終わってから15年後の1961年に撤廃されましたが、多くの入所者たちは出所を拒み、同院を「我が家」として生活を続けました。1994年、楽生院の敷地に地下鉄の施設を建造する計画が発表されると、建物の取り壊しと患者たちの立ち退きをめぐって議論が巻き起こり、やがて同院の保存運動へと発展しました。
本作は3章で構成され、入所者、若い活動家、そして台湾の歴史に鑑賞者を誘い込む架空の政治犯の視点から、楽生院の歴史を紐解いていきます。本作は、4チャンネルのビデオ・インスタレーションとして制作されましたが、「MAMスクリーン012:チェン・ジエレン(陳界仁)」のためにシングル・チャンネルの映像として再編集されました。


チェン・ジエレン《星図》

2017年
ビデオ、白黒、サイレント
3分50秒

本作は、チェンが実兄のアパートで撮影した一連の白黒写真のイメージで構成されています。1997年のアジア通貨危機以降、長期の無職状態だったチェンの兄は、あるとき自殺を試みました。チェンの説明によれば、命を取り留めた彼は、それから各種の「異質な知識」に関する図像や文献を集めるようになりました。彼が収集したものが全体として何を意味しているのか、確かな答えはありません。しかしそこには、既存の世界観に囚われることなく巨大な知のシステムを構築しようと試みる、ある個人の意志が具現化されているようです。本作は《中空の地》の序章として位置づけられています。


チェン・ジエレン《中空の地》

2017年
ビデオ、カラー/白黒、サウンド
61分7秒
日本語字幕:奥村雄樹

「疎外化がますます進行する私たちの資本主義社会において、いまも落地掃(ローデーサオ)は人々を触発する力があるはずです」とチェンは言います。台湾の農村では作物が育たない時期に簡易な歌劇やパレードを催す伝統があり、その土着的な演劇のことを「落地掃」と呼びました。村人たちはそこで自身のアイデンティティを超えて農民、芸術家、神話上の存在といった異なる社会的な役柄を引き受けることで、複数の人格を出現させました。
現代版の落地掃として構想された本作では、労働者、失業者、活動家たちが演者として登場し、自殺を試みた男のための葬列を行います。そこでは、人々のアイデンティティや関係性が相互に結び付きながら徐々に変化するため、個々の身体は豊かな想像力の源泉となって、別の世界へと繋がっていくようです。


「MAMスクリーン012:チェン・ジエレン(陳界仁)」

会期:2019.11.19(火)~ 2020.3.29(日)

主催:森美術館

企画:矢作 学(森美術館アシスタント・キュレーター)

※展覧会ページはこちら:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamscreen012/


「MAMスクリーン 013:ムニーラ・アル・ソルフ」先行公開

現在、新型コロナウイルス感染症の影響で開幕が延期されている「MAMスクリーン013:ムニーラ・アル・ソルフ」の中から、特別に作家の初期の代表作2作品《ラワーンの歌》(2006年)と《まるで私がそこにふさわしくないかのように》(2006年)を先行公開します。

ムニーラ・アル・ソルフ(1978年レバノン、ベイルート生まれ)は母国のレバノンとヨーロッパの両方を拠点に、国際的に活動しています。近年は第56回ベネチア・ビエンナーレ(2015年)や、ドクメンタ14(ドイツ、カッセル、2017年)などに参加しています。

政治や宗教が対立し難民問題が発生する現代社会での、日常の出来事や小さな物語、女性ならではエピソードなどを、ユーモアを込めて描きます。作風はドキュメンタリーの形式を用いますが、あえてフィクションやファンタジーを織り交ぜることもあり、「独白」や「語り」という手法を多用します。

「MAMスクリーン013:ムニーラ・アル・ソルフ」では上記2作品に加え、計4作品の上映を予定しています。開幕後は、ぜひ、森美術館の大きなスクリーンで作品をお楽しみください。


ムニーラ・アル・ソルフ《ラワーンの歌》

2006年
ビデオ
7分19秒
Courtesy: Sfeir-Semler Gallery, Beirut/Hamburg

本作では、戦争を主題とする作品が多いレバノンで、あえて戦争を語らないことを決意する架空のアーティストを作家自身が演じます。
制作スタジオに行ったり、ドキュメンタリー映画祭への応募を取り消したりと、作家の独り語りでストーリーは展開していきますが、結局、戦争を語ることになってしまう結末はアイロニカルです。レバノン内戦の記憶はほとんどないであろう若き作家アル・ソルフの「自分は作品で戦争を語るべきなのか」という葛藤が読み取れます。


ムニーラ・アル・ソルフ《まるで私がそこにふさわしくないかのように》

2006年
ビデオ
12分8秒
Courtesy: Sfeir-Semler Gallery, Beirut/Hamburg

本作では作品制作をやめた4人のアーティストの回想が描かれています。彼らの過去の作品として、有名な現代美術作品の類似品や古典作品の流用という現代美術の典型的手法を用いたものがコミカルに登場します。これは一定の形式、条件や流行に左右されがちな現代美術界で作品を制作しなくてはならない、アル・ソルフ自身の葛藤を表現したものでしょう。


「MAMスクリーン013:ムニーラ・アル・ソルフ」

会期:開幕日未定

主催:森美術館

企画:近藤健一(森美術館キュレーター)

※展覧会ページはこちら:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamscreen013/

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