2012年4月18日(水)

「1分でわかるアラブ」(2)男たちの社交場/カフェはじめて物語

世界中で楽しまれているカフェの発祥の地がアラブだという事は、実はあまり知られていない事実でもあります。東京には喫茶店が約8000軒もあり、喫茶は私たちにとっても身近な文化で、普段から「カフェにお茶しに行こうよ!」というフレーズは様々なシーンで耳にします。 第2回はこのカフェを通じてアラブを見ていきます。

私達にとってはあまりなじみのないアラブの魅力に触れるため、5つの切り口から斜め読みで解説する「1分でわかるアラブ」。今回もどうぞお楽しみください。
 

カフェはアラブが発祥の地、そこからヨーロッパに広がったといわれます。アラビア語でコーヒーは「カフワ」。これが転じてコーヒーとなり、カフェとなりました。ほかにもアラビア語由来の言葉を私たちは使っています。わかりやすい例をひとつ。「アル」はアラビア語の定冠詞で、このアルが頭に付くものはアラビア語からかもしれません。アルコールやアルカリがそうです。

しかし、アルコールはアラビア語由来ですが、イスラームは飲酒を戒めています。日本の中年男にとって酒のない夜はどうにも心許ないのですが、アラブの男たちはどうなのでしょう?


男たちの"オープンカフェ"/イラク
撮影:渡辺 悟


男たちの"オープンカフェ"/イラク
撮影:渡辺 悟

「人気のカフェがあるから今夜どう?」。シリアのダマスカスで、現地に住む知人に誘われたことがありました。世界遺産にも指定された旧市街(オールド・ダマスカス)の閑静な住宅地にそのカフェはありました。


現存世界最古のウマイヤモスク
By D Jabi

ちなみに、旧市街には現存世界最古のウマイヤモスクがあります。城壁に囲まれた石造りの街並が中世の面影を今に残し、縦横につながる細い街路は迷路のようでもあり、散策するのにとても素敵なところです。

カフェはまったく民家の門構えでしたが、店内は若者たちでいっぱい。闇夜の静けさのなか、開けたドアから押し出されてきた光と笑い声が印象に残っています。吹き抜け2階、ロフトのような席に通されて、そこから階下の若者たちを眺めながら、りんご風味の水タバコと、カルダモンとともに煮出した香り豊かで濃いアラブコーヒーをゆったりと楽しみました。隣国レバノンの女性アイドルが歌うポップスが流れ、立ち上がって音楽に体を合わせる人も。しゃれたナイトスポットですが、酒はありません。それでも実に賑やかに、若者たちは飽くことなく深夜まで会話を楽しんでいました。


シリア、ダマスカスのアラブコーヒー
By Daniel Roy


水タバコ シーシャ
By soranyan

どんな田舎町に行っても、まず間違いなく路上に椅子を並べた"オープンカフェ"があるはずです。そこがアラブの男たちの社交場なのです。彼らは本当におしゃべり好きで、また友人・知人たちとの時間を大切にします。酒ではなく、コーヒーやお茶がその欠かせないお供なのです。


男たちの"オープンカフェ"/イラク
撮影:渡辺 悟

さて、よく飲まれるのはコーヒーよりも紅茶なのですが、中国の広東から陸路広がった「チャ」は、アラビア語で「シャイ」、トルコやイランに近い地域では「チャイ」とも呼ばれていました。ロシアやインドでも「チャイ」、日本で「チャ」。つながっていますね。
 

文:渡辺 悟

わたなべ・さとる
ジャーナリスト、カメラマン。2003年のイラク戦争、そして戦後も続けてイラクを取材。著書に『クルド、イラク、窮屈な日々―戦争を必要とする人々』(現代書館)ほか。雑誌『季刊アラブ』の編集に携わっている。


季刊アラブ
 

「1分でわかるアラブ」とは?
アラブの魅力を5つの切り口から斜め読みで解説します。
すべて読み終わった頃には、アラブがずっと身近に感じられるはず。

次回は5/2(水)更新です。

<関連リンク>
・「1分でわかるアラブ」
(1)スクリーンに映るアラブ
(2)男たちの社交場/カフェはじめて物語
(3)羊か鶏かそれが問題だ/料理にホスピタリティー
(4)悠久の遺跡がいっぱい/文明発祥の地メソポタミア
(5)美は幾何学的にあり!?/書道とアラベスク

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