2012年5月16日(水)

「1分でわかるアラブ」(4)悠久の遺跡がいっぱい/文明発祥の地メソポタミア

世界4大文明の1つである古代文明「メソポタミア」。
「文明のゆりかご」とも表される、チグリス川、ユーフラテス川周辺の肥沃な恵みに育まれたメソポタミア文明はエジプトなどよりも早く農業が行われた地域として知られています。その祖は古く紀元前9000年頃に移住してきたシュメール人であり、当時の日本はまだ縄文時代でした!

ここで栄えた都市文明、文字、神話などは、現代文化の礎として、確実に今に繋がっていますね。今回はこれらの遺跡や世界遺産を通じてアラブを紹介します。
悠久の古代ロマンに想いを馳せながらアラブを感じてみませんか?
 

「世界四大文明」という言い方はもはや使わないそうですが、いずれにしても世界で最も古い文明がメソポタミア、いまのイラクあたりにありました。そのメソポタミアにあって近年、日本に縁のあった場所はどこだかわかりますか。自衛隊が派遣されたサマーワです。それまで、私たちにはまったく馴染みのなかったサマーワに、重要な遺跡があります。

サマーワの市街地から車で1時間ほど、ユーフラテス川が育んだ緑も姿を消し、まったくの沙漠地帯に「ウルク遺跡」はありました。


砂漠の中に突如現れる巨大遺跡は、まさにシュメール人の都市国家が栄えていた証
シュメール文明のウルク遺跡(イラク南部)。
メソポタミア文明とは、チグリス川・ユーフラテス川の流域に生まれた文明を総称する呼び名で、その初期文明がシュメールです。
撮影:渡辺 悟


紀元前2千年紀のメソポタミア南部の地図(ウィキペディアより)

遺跡には管理人の親子が小さな家に住んでいました。見渡す限り白茶けた沙漠としか見えなかったのですが、彼らに案内されて小高い丘に立つと遺跡群が広がっていました。神殿や宮殿、住居などの遺跡、かつて発掘に使われた錆びたトロッコレールが彼方に延びています。紀元前3000年頃、このあたりにシュメール人の都市国家が栄えていた証でした。


見渡す限りの砂漠の中に静かにたたずむ「ウルク遺跡」
神殿、宮殿、住居など建物が見受けられ、多くの人々が賑やかに生活していたのでしょう。
撮影:渡辺 悟

「メソポタミア」は、チグリス川とユーフラテス川の「2つの川の間」という意味です。気温が高く降水量の少ない地域のため、雨には頼れませんでしたが、人工灌漑によって麦作を中心に豊かな恵みを得ます。バグダードからペルシャ湾まで900キロの標高差がわずか34メートル、ゆったりと流れる2本の川と大沖積平野が文明を育みました。


ユーフラテス川
By Hovic


チグリス川
By mattebb

ウルクは「ギルガメッシュ叙事詩」でも知られています。紀元前2600年頃に実在したギルガメシュ王がモデルとされ、王は半神半人、ひどい暴君であったために怒った住民は女神に助けを求めます。女神が粘土をちぎって投げると、王のライバルとなる屈強な男が生まれ......。これはほんのさわりですが、ノアの方舟の原型といわれる物語も含む長編冒険ものの神話です。

この文学作品は、粘土板に、楔形文字で残されました。楔形文字は紀元前3500年頃、シュメール人によって発明されました。最古の粘土板文字もこのウルクで発掘されていて、文字発祥の地の可能性もあるそうです。教科書に載る有名なハンムラビ法典も、この楔形文字で書かれています。ひと昔前にはハンムラビ法典が「最古」と教わったものですが、いまでは2番目、現存最古はこれもシュメールのウル・ナンム法典などとなりました。ハンムラビ法典は、シュメールの次に繁栄したバビロニアの王・ハンムラビによるもので、その都バビロンの遺跡がウルクから約160キロ北西にあります。


ハンムラビ法典。玄武岩製の碑に楔形文字で刻まれている(ルーブル美術館蔵)
撮影:渡辺 悟

イラクだけでもこうした遺跡が20以上。観光地としても、エジプトのピラミッドはじめ、映画「インディ・ジョーンズ」3作目のロケ地ヨルダンのペトラ、ローマ帝国期のシリアのパルミラなどなど、アラブの遺跡や世界遺産は枚挙にいとまがありません。
 

文:渡辺 悟
わたなべ・さとる
ジャーナリスト、カメラマン。2003年のイラク戦争、そして戦後も続けてイラクを取材。著書に『クルド、イラク、窮屈な日々―戦争を必要とする人々』(現代書館)ほか。雑誌『季刊アラブ』の編集に携わっている。


季刊アラブ
 

「1分でわかるアラブ」とは?
アラブの魅力を5つの切り口から斜め読みで解説します。
すべて読み終わった頃には、アラブがずっと身近に感じられるはず。

次回は5/30(水)更新です。

<関連リンク>

・インタビュー:「アラブ・エクスプレス展」近藤健一編
(1)アラブの世界の中の多様性を日本に紹介したい~
(2)本展のみどころ"黒い噴水"やアラブ・ラウンジについて

・「1分でわかるアラブ」
(1)スクリーンに映るアラブ
(2)男たちの社交場/カフェはじめて物語
(3)羊か鶏かそれが問題だ/料理にホスピタリティー
(4)悠久の遺跡がいっぱい/文明発祥の地メソポタミア

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