2012年6月18日(月)

大きな声で自分のメッセージを叫んだ!
こどもワークショップ「チルドレン・プライド in 六本木ヒルズ」

時代をこえて人々がもとめる理想の社会、絶えることがない個々人の生きることへの理想の追求。それらの実体のないものに形を与え作品をつくり続けてきたイ・ブル。20年にわたる彼女の制作活動を展覧会に訪れる多くの人に身近に感じてもらい、たのしんでもらいたい。関連プログラムを企画するなかで、現代美術作家の山本高之さんが行っているワークショップ「チルドレン・プライド」で、子どもたちが日常で感じている理想や希望を形にしてみたら、イ・ブルの作品をもっと身近に感じてもらえるかもしれないと考えました。今回は、ゴールデンウィーク初日に開催した子どもたちのワークショップ「チルドレン・プライドin六本木ヒルズ」の様子をレポートします。
 


山本高之さんが世界中で行ってきたワークショップの様子を子どもたちに説明します

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震後、特に、こどもたちへの未来を託したいと思うようになったと語る山本さんは、ロンドンでアートの勉強をし、帰国後は小学校の教員をしながら作品制作をしてきた経歴を持つアーティスト。シャルジャや横浜などの子どもたちが登場するスプーン曲げを教える》シリーズや、あいちトリエンナーレ2010で展示された《どんなじこくへいくのかな》シリーズなど、子どもたちを対象にワークショップを行い、作品として発表しています。山本さんが子どもたちを対象に行う一連のワークショップでは大人が形成した社会システムがシニカルに反映され、大人が追求する理想とそのシステムに則って純粋に楽しむ子どもの姿の対比が作品をとおして映し出されます。


プラカードを作る子どもたち


思い思いのメッセージを掲げ、すこし緊張した面持ちで行進

ワークショップ当日は5歳から10歳までの18名のこどもたちが参加。「今日はどんなことするのかな?」「このお兄さんだれ?」子どもたちはどきどきわくわく。世界のいろんなところで山本さんが行ってきたワークショップの映像を見て、子どもたちの期待も高まります。次に山本さんが見せてくれたのは、大きな旗や言葉が書かれたプラカードをもって大勢の大人の人たちが行進する様子。世界のいろんなところで大きな声で訴える人たちの写真。何か一生懸命ほかの人に伝えようとしているんだね、なんとなく子どもたちもわかったかな?山本さんの説明を受けて子どもたちは一目散に作業に取り掛かります。伝えたいメッセージを山本さんと一緒に考え、大きな字で目立つように書き、それをプラカードにします。プラカードが完成したら、次は、メッセージを大きな声を出して伝えられるようにシュプレヒコールの練習。大事なことは、参加している他の友達のメッセージもちゃんと聞いて、大きな声で伝えること。列をなして行進し、コールする順番を守って、自分のメッセージを伝える。子どもたちは一生懸命です。


思い思いのメッセージをプラカードにしたため、嬉しそうな子どもたち

なかには人前で大きな声を出してコールすることに躊躇って泣いてしまう子もいましたが、練習を終えていざ本番。森タワー52階の東京シティビューや六本木ヒルズのなかでももっとも人通りが多い大きな蜘蛛の彫刻《ママン》がある66プラザを行進します。「むらさきいろのランドセルがほしい」「いつもボールペンを使いたい」「自分だけの家がほしい」「ハムスターをかいたい」など、今一番好きなこと、やりたいことをコールする子どもたちの声に多くの人たちが耳を傾けてくれました。やり終わった後の子どもたちはそれまでの緊張が解けたのか、にっこり笑顔。大人になってもなかなか自分の理想を口に出して言うのはなかなか気恥ずかしいもの。ましてや他の人と一緒に行進しながらみんなで理想を語るなんてめったにない体験。参加してくれた子どもたちの満足そうな顔をどうぞご覧ください。

文:白木栄世(森美術館アシスタント・エデュケーター)
 

<関連リンク>

「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」
会期:2012年2月4日(土)~5月27日(日)

設営風景「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」(flickr)

「イ・ブル展」アーティストトーク2012/2/4(flickr)

展示風景「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」(flickr)

「イ・ブル展」はこうしてつくられた!
普段見られない舞台裏に潜入したフォトレポートをご紹介します。(Blog)

カテゴリー:03.活動レポート
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