2015年9月29日(火)

森美術館が街に飛び出した!
こどもたちとつくるパブリックアート

森美術館が六本木ヒルズの街に飛び出し、パブリックアートのワークショップを開催しました!
パブリックアートを探検し、こどもたちが作品づくりを楽しんだ様子をリポートします。

夏休み真っ只中の2015年8月13日(木)、「パブリックアート&デザイン探検ワークショップ」(※)を開催しました。六本木ヒルズにはその玄関口で大きな存在感を放つルイーズ・ブルジョワの《ママン》を始め、約20作品以上のパブリックアートとストリートファニチャーが点在しています。これらは六本木ヒルズ創設時、各作家に制作を依頼し設置されたもので、六本木ヒルズが人々の暮らしを豊かにする「文化」を中心に置く街、「文化都心」であり続けることを体現するものです。今回のワークショップ会場は森タワー最上階の森美術館ではなく、商業施設の連なるウェストウォーク。ここはけやき坂や毛利庭園、森美術館や展望台へとつながる街の交差点です。六本木ヒルズのパブリックアートを探検したあと、自分の街に置きたいパブリックアートをイメージし、こどもたちが思い思いの作品を作りました。

集まった18人のこどもたちは、最初にパブリックアートの話を聞きました。ニューヨーク、上海、シカゴなど世界の都市にあるパブリックアートの写真を一緒に見ていきます。(写真1)例えば、街中に巨大な磁石?!目に見えない磁力によって人や情報が集まる文化・経済の中心になるようにとの願いが込められた「上海環球金融中心」のパブリックアートです。(写真2)2014年にオープンした虎ノ門ヒルズには8つの言語の文字で作られた巨人のかたちをしたアートが。(写真3)世界の多様な文化を理解し合う未来社会と国際的な街の発展への思いが込められています。


(写真1)

(写真2)
劉建華
《磁(グローバルマグネット)》
2008年†

(写真3)
ジャウメ・プレンサ
《ルーツ》
2014年†

こんなふうに、パブリックアートは作者の考えが表現されているだけでなく、街の作り手がその土地の歴史や環境に思いを寄せながら、人々の幸せと街の豊かな発展への願いが込められたものでもあるのです。誰もが親しめる公共の場に設置され、待ち合わせなどにも使われることや、けやき坂のストリートファニチャーはイスの機能を持ち、人々の対話を生み出す装置でもあることなども皆で話しました。

そして、探検に出発。けやき坂にある、インテリアデザイナーの内田繁さんが作った赤いリボンが地上に舞い降りたかのようなファニチャー《愛だけを・・・》(写真4)では、寝転べるところ、心地よく座れるところを探しました。また、曲げる前のステンレス板はどれくらいの長さがあったかをロープで測ってもみました。ルイーズ・ブルジョワの《ママン》は真下から見上げ、お腹に大理石の卵を抱えていることを確認。作者自身の母のイメージを重ねた蜘蛛はこの場所を守り、巣を張るように人々や情報が集まる場の象徴になっています(写真5)。

(写真4)

(写真5)

探検を終えると会場に戻り、自分の街に置く作品のアイデアを膨らませます。粘土と組み合わせる装飾用の材料を自分で選び、思い思いの作品を作っていきました(写真6、7)。紙粘土をこねて色を混ぜたり、キラキラした装飾や紐や色紙、厚紙等を切ったり貼ったりして、たっぷりあると思っていた時間もあっという間。最後にはそれぞれの作品について全員が発表しました。

(写真6)

(写真7)

青い海を泳ぐ大きなクジラと波しぶきの作品は、波のひとつひとつが丸いイスになっていて大勢の人が座れるというもの。あるお子さんは集中して山を作っていましたが、完成時には赤いマグマが加わり活火山に。この夏に桜島を見に行った経験から生まれたダイナミックな作品です。
黄色いバナナのベンチはキラキラ感がポイント。子どもからお年寄りまでみんな大好きな赤リンゴをモチーフにしたイスの作品。とても大きな目のついたレリーフ。王冠を被ってとびきりのおしゃれをしている鳥のオブジェ。イメージ豊かなこどもたちの手によって、街にあったら誰もが楽しくなるような独創的な作品がたくさん完成しました(写真8、9、10)。

(写真8)

(写真9)


(写真10)

森美術館から街へ飛び出して行うワークショップ。街をアートの題材にして、創造的な時間をたくさん作れたらどんなに楽しいでしょう。こどもたちと一緒にアートをきっかけにして街とのつながりを深めていく可能性が拓けていきました。


建築的な立体感が出るような装飾材料。
新聞紙、ネット、モール、紐、ガラス、木、コルク、ゴム、シール、スポンジなど、無彩色から鮮やかな色彩までさまざまに揃えて。


この日、初めてお目見えした森美術館の「アートカート」(デザイン・制作:sixinch)。大きな模造紙から小さな道具や材料まで使いやすく収納できるよう工夫されています。
森美術館のイメージカラーである赤は、ヒルズの街に出ても目を引きました。次の出番をぜひお楽しみに!

※六本木ヒルズに拠点を置く企業や店舗がこどもたちへここでしかできない学びの場を提供する「六本木ヒルズ キッズワークショップ」を毎夏開催しています。今年は、MITメディアラボの協力のもと開催した「MIRAI SUMMER CAMP」(7/29-8/6)など、全60種類のワークショップが展開されました。森美術館も当プログラムを含めて毎年参加しています。

文:白濱恵里子(森美術館エデュケーター)
撮影:御厨慎一郎(†以外)
 

<関連リンク>

親子で参加しませんか?
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~六本木ヒルズ アートのヒミツ探検ツアー

カテゴリー:03.活動レポート
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