2016年1月25日(月)

「村上隆の五百羅漢図展」作品紹介#2~《五百羅漢図》——「玄武」「朱雀」

《五百羅漢図》は、世界の絵画史上最大級と呼ぶにふさわしい全長100メートルに及ぶ大作です。作品紹介ブログ第2回目は、《五百羅漢図》を構成する4面のうち、「玄武」「朱雀」に迫ります。

《五百羅漢図》——「玄武」「朱雀」

北方を司る玄武は、通常、亀と蛇が合体した姿で表されますが、画中ではその姿は描かれておらず、中央の霊山とその右側の霊獣・蜃(しん)が、それぞれ亀と蛇のイメージの代わりになっています。
2012年カタール・ドーハでの展示の際は、未完成で四つ目の巨大な霊獣などは描かれておらず、完成版は本展が、世界初公開となりました。


村上 隆
《五百羅漢図》[玄武] 部分
2012年
展示風景:「村上隆の五百羅漢図展」 森美術館、2015年
撮影:高山幸三
© 2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All

南方を司る朱雀は、近世の鳳凰の図柄を元に手塚治虫の「火の鳥」のイメージが加味されています。
宇宙的な背景に自在に浮遊する羅漢はまるで、巨大な波に乗って鎮魂のために私たちのもとにやって来たかのようです。過去のさまざまな羅漢図を研究し、現代ならではの五百羅漢図を目指したという本作には、東洋の伝統的な図像と、現代の雑誌やマンガなどから引用した要素が渾然一体となっています。

パブロ・ピカソがスペイン内戦の悲劇を描いた《ゲルニカ》に例え、本作を「村上のゲルニカ」と評する声があります。2011年の東日本大震災、そして原発事故に直面し、多くのアーティストたちが無力感を抱く一方で、さまざまな活動も行われました。
社会の危機的状況においてアーティストや芸術に何が出来るのか――村上は、過去を現在に、現在を未来に伝えるため、若いアーティストたちとともに後世に残るような巨大絵画を作り上げました。
《五百羅漢図》はまさに、村上隆の出した答えと言えるでしょう。


展示風景:「村上隆の五百羅漢図展」 森美術館、2015年
撮影:高山幸三
©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
 

<関連リンク>

「村上隆の五百羅漢図展」
会期:2015年10月31日(土)-2016年3月6日(日)
「村上隆の五百羅漢図展」見どころ紹介!

・「村上隆の五百羅漢図展」作品紹介
(1)《五百羅漢図》——「青竜」「白虎」
(2)《五百羅漢図》——「玄武」「朱雀」
(3)《五百羅漢図》ができるまで
(4)最新絵画シリーズ
(5)《宇宙の産声》
(6)DOB君、たんたん坊、ゲロタン
(7)[番外編]村上羅漢ロボ

カテゴリー:01.MAMオピニオン
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