見えざる手

作家名 : 田村友一郎/Tamura Yuichiro(1977-)
出身/在住 : 日本
制作年 : 2022
素材 : 3チャンネル・ビデオ、サウンド、インクジェットプリント、磁器製カシラ、暖簾
サイズ : 21分49秒

田村友一郎は2013〜2014年にベルリン芸術大学空間実験研究所に在籍、2017年に東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程を修了。写真、映像、インスタレーションなど多様なメディウムを駆使し、土地固有の史実からテレビや米国の大衆文化まで、幅広い着想源から現実とフィクションが交差する物語を構成する。イメージの連鎖や言葉の連関で作品の流れを展開させることもある。近年の主な展覧会に、ゴベット・ブリュースター・アートギャラリーでの個展(ニュージーランド、ニュープリマス、2019年)、2019アジア・アート・ビエンナーレ(台湾、台中)、ヨコハマトリエンナーレ(神奈川、2020年)、国際芸術祭「あいち2022」などがある。

本作で田村は、愛知県瀬戸市や常滑市の特産品であり、戦後、海外で人気を集めたノベルティと称される陶製人形産業の盛衰に着目した。彼はこの産業の衰退の契機となったのが、1985年にニューヨークで締結された「プラザ合意」だったという仮説を立て、会議に参加した当時の先進5か国、日米英仏西独の蔵相の顔を模した人形浄瑠璃風の陶製オブジェを制作した。さらに経済学者のアダム・スミス、カール・マルクス、ジョン・メイナード・ケインズが黒衣姿で会話を交わす映像が、3画面で展開される。楽観的な自由主義経済論や、資本主義は共産主義への通過点であるといった三者三様の立場から、現在までに起きた経済上の事象についての時空を超えた語らいが、黒衣たちによって繰り広げられる。
陶製人形のノベルティは、プラザ合意後の円高によって輸出競争力を急激に失ったが、今日、為替や株価の急落により一瞬にして財産を失うリスクは当時よりも高い。本作のタイトルはスミスの言葉の引用であり、作品の終盤では心臓発作で他界したケインズの心臓をマッサージする手にも言及されるが、今日、誰の手によって世界の経済は操られているのか、その黒衣の手によって私たちは生かされているのか否か?などの問いを、本作はユーモアたっぷりに仄めかすのである。

見えざる手

作家名 : 田村友一郎/Tamura Yuichiro(1977-)
出身/在住 : 日本
制作年 : 2022
素材 : 3チャンネル・ビデオ、サウンド、インクジェットプリント、磁器製カシラ、暖簾
サイズ : 21分49秒

田村友一郎は2013〜2014年にベルリン芸術大学空間実験研究所に在籍、2017年に東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程を修了。写真、映像、インスタレーションなど多様なメディウムを駆使し、土地固有の史実からテレビや米国の大衆文化まで、幅広い着想源から現実とフィクションが交差する物語を構成する。イメージの連鎖や言葉の連関で作品の流れを展開させることもある。近年の主な展覧会に、ゴベット・ブリュースター・アートギャラリーでの個展(ニュージーランド、ニュープリマス、2019年)、2019アジア・アート・ビエンナーレ(台湾、台中)、ヨコハマトリエンナーレ(神奈川、2020年)、国際芸術祭「あいち2022」などがある。

本作で田村は、愛知県瀬戸市や常滑市の特産品であり、戦後、海外で人気を集めたノベルティと称される陶製人形産業の盛衰に着目した。彼はこの産業の衰退の契機となったのが、1985年にニューヨークで締結された「プラザ合意」だったという仮説を立て、会議に参加した当時の先進5か国、日米英仏西独の蔵相の顔を模した人形浄瑠璃風の陶製オブジェを制作した。さらに経済学者のアダム・スミス、カール・マルクス、ジョン・メイナード・ケインズが黒衣姿で会話を交わす映像が、3画面で展開される。楽観的な自由主義経済論や、資本主義は共産主義への通過点であるといった三者三様の立場から、現在までに起きた経済上の事象についての時空を超えた語らいが、黒衣たちによって繰り広げられる。
陶製人形のノベルティは、プラザ合意後の円高によって輸出競争力を急激に失ったが、今日、為替や株価の急落により一瞬にして財産を失うリスクは当時よりも高い。本作のタイトルはスミスの言葉の引用であり、作品の終盤では心臓発作で他界したケインズの心臓をマッサージする手にも言及されるが、今日、誰の手によって世界の経済は操られているのか、その黒衣の手によって私たちは生かされているのか否か?などの問いを、本作はユーモアたっぷりに仄めかすのである。

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