展覧会

ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ

2024.9.25(水)~ 2025.1.19(日)

27年ぶりとなる国内最大の個展、作品の半数以上が日本で初公開

1997年以来、27年ぶりに開催される国内最大規模の個展で、彫刻、絵画、ドローイング、インスタレーションなど約100点を一挙に公開します。
ブルジョワは98歳で他界するまで制作を続け、晩年にキャリアの代表作ともいえる作品を多く発表しています。布を用いた作品など、本展出品作品の約半数が、1998年以降に制作された日本初公開の作品となります。

ルイーズ・ブルジョワ《ヒステリーのアーチ》
ルイーズ・ブルジョワ
《ヒステリーのアーチ》
1993年
パティナ、ブロンズ
83.8×101.6×58.4 cm
撮影:Christopher Burke
© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR and VAGA at Artists Rights Society (ARS), NY
ルイーズ・ブルジョワ《ヒステリーのアーチ》
ルイーズ・ブルジョワ
《ヒステリーのアーチ》
1993年
パティナ、ブロンズ
83.8×101.6×58.4 cm
撮影:Christopher Burke
© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR and VAGA at Artists Rights Society (ARS), NY

家族との関係にもとづく3つの章で構成

本展は、ブルジョワの創造の源であった家族との関係をもとにした3つの章から構成されています。第1章「私を見捨てないで」では母との関係、第2章「地獄から帰ってきたところ」では父との確執、そして第3章「青空の修復」では、家族の関係性の修復と心の解放が主なテーマとなっています。
さらに、各章をつなぐ2つの小スペースでは、初期の作品を年代順に紹介しています。後述の絵画作品群(1938-1948年)と彫刻シリーズ「人物像」(1946-1949年)は、フランスでの幼少期と青年期、そしてニューヨークでの成人期の経験を主題としています。また、1960年代以降のより抽象的な造形の彫刻群には、1950年代に精神分析を受けていた影響がみられます。
加えて、ブルジョワは才能のある文筆家でもありました。膨大な日記や手紙のほか、自身の精神状態を分析した数百もの記録が残されています。これらの文章は啓示的で、不安、怒り、嫉妬、殺意、罪悪感、同情、感謝、愛といった複雑な感情や心理状態を掘り起こしています。本展では作品に加え、ブルジョワが書き綴った言葉も会場各所に掲出します。

世界的な評価が高まる初期絵画作品を展示

ブルジョワが1938年にニューヨークに移住してから約10年の間に制作された初期絵画作品に注目した展覧会が、メトロポリタン美術館(ニューヨーク、2022年)やベルヴェデーレ美術館(ウィーン、2023-2024年)で開催され、近年世界的に高い関心を得ています。本展では、アジア初公開となる約10点を含むこれらの初期絵画作品をまとめて展示します。
ブルジョワは、1938年、アメリカ人美術史家のロバート・ゴールドウォーターとの結婚を機にパリからニューヨークに渡りました。その頃描かれた絵画には、自画像、家、フランスに残してきた家族、植物、自然、様々な建築的なフォルムなど、その後数十年にわたって繰り返される重要なモチーフが登場します。なかでも、女性を守ると同時に縛りもする家屋によって上半身が覆い隠された女性像を描く「ファム・メゾン(女・家)」シリーズは、1960年代のフェミニズム運動で高く支持されるなど、ブルジョワのキャリアを象徴する作品群のひとつです。

ルイーズ・ブルジョワ《堕ちた女(ファム・メゾン[女・家])》
ルイーズ・ブルジョワ
《堕ちた女(ファム・メゾン[女・家])》
1946-1947年
油彩、リネン
35.5×91.4 cm
撮影:Christopher Burke
© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR and VAGA at Artists Rights Society (ARS), NY
ルイーズ・ブルジョワ《堕ちた女(ファム・メゾン[女・家])》
ルイーズ・ブルジョワ
《堕ちた女(ファム・メゾン[女・家])》
1946-1947年
油彩、リネン
35.5×91.4 cm
撮影:Christopher Burke
© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR and VAGA at Artists Rights Society (ARS), NY
ルイーズ・ブルジョワ《家出娘》
ルイーズ・ブルジョワ
《家出娘》
1938年頃
油彩、木炭、鉛筆、キャンバス
61×38.1 cm
撮影:Christopher Burke
© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR and VAGA at Artists Rights Society (ARS), NY
ルイーズ・ブルジョワ《家出娘》
ルイーズ・ブルジョワ
《家出娘》
1938年頃
油彩、木炭、鉛筆、キャンバス
61×38.1 cm
撮影:Christopher Burke
© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR and VAGA at Artists Rights Society (ARS), NY

六本木ヒルズを象徴するパブリック・アート《ママン》をはじめ、蜘蛛をモチーフとした作品を紹介

1947年に描かれた小さなドローイングから、その後制作された大きなブロンズの彫刻に至るまで、蜘蛛はブルジョワの芸術を代表するモチーフとして繰り返し登場してきました。彼女にとって蜘蛛は、家業のタペストリー工房を営み、ブルジョワが「親友」とみなしていた温和で勤勉な実母を象徴しています。また、糸で傷を繕い、癒す修復家である一方、周りを威嚇する捕食者でもあると説明しており、母性の複雑さを表現するものでもあります。
さらに、蜘蛛が巣作りのために体内から糸を出すように、自身の体から負の感情を解放するために作品を作っているとも語っています。蜘蛛は彼女の自画像でもあるのです。

ルイーズ・ブルジョワ《ママン》
ルイーズ・ブルジョワ
《ママン》
1999/2002年
ブロンズ、ステンレス、大理石
9.27×8.91×10.23 m
所蔵:森ビル株式会社(東京)
ルイーズ・ブルジョワ《ママン》
ルイーズ・ブルジョワ
《ママン》
1999/2002年
ブロンズ、ステンレス、大理石
9.27×8.91×10.23 m
所蔵:森ビル株式会社(東京)

ジェニー・ホルツァーによるルイーズ・ブルジョワの言葉を用いた映像インスタレーションなどを展示

言葉を用いた作品で世界的に知られるコンセプチュアル・アーティスト、ジェニー・ホルツァー(1950年米国オハイオ州生まれ)は、1990年後半から生前のブルジョワと交友関係を築き、彼女の日記や手紙、また作品に書かれた数々の文章に強い関心を抱いています。2022年にはスイスのバーゼル市立美術館で開催されたブルジョワの個展にキュレーターとして携わり、ブルジョワの言葉を使用した映像作品をバーゼル市内に点在する建築物のファサードに投影しました。本展でも同様の映像作品を紹介します。
また、本展では、ニューヨークのアンダーグラウンド・シーンで活躍したスーザン・クーパー(1952-2023年)が、ブルジョワが1978年の自作《対決》内で企画したパフォーマンス《宴-身体の断片によるファッション・ショー》に出演している様子の記録映像を展示します。

ブルジョワの活動歴とアーカイブ資料を展示

ルイーズ・ブルジョワの98年間の人生とアーティストとしての活動を、アーカイブ資料と共に紹介します。また彼女が11歳のころからつけていた日記の抜粋、精神分析の記録の複製、展覧会のチラシ、作家のドキュメンタリー映像なども展示予定です。

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