村上隆の五百羅漢図展

みどころ

727系、円相、抽象 | 達磨 | DOB君 | 五百羅漢図 - 「青竜」「白虎」 | 五百羅漢図 - 「玄武」「朱雀」

DOB君

展示風景:「村上隆の五百羅漢図展」 森美術館、東京、2015年 撮影:高山幸三
(C)2015 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

キャラクターを現代美術の主題に押し上げたとも言えるDOB君は、1993年、にわかに日本発の「キャラクター文化」が注目されるなか、その意味の脱臼を図るべく生み出されました。そのかたちは、マンガ『ど根性ガエル』のピョン吉や、ビデオゲームに登場するソニック・ザ・ヘッジホッグなどが参照されました。名前は、コメディアン・由利徹の「おしゃまんべ」とマンガ『いなかっぺ大将』の「どぼじで、どぼじて」という2つのギャグを意味なく合体させた造語のローマ字表記の最初の3文字「DOB」に由来します。

つまり、「DOB」そのものには意味がないのです。これは、村上が大学の博士論文のタイトルである『美術における「意味の無意味の意味」をめぐって』に由来する、作家独特のニヒリズム、シニシズムを経た、作品制作の動機でも、また主題そのものでもあるのです。その後、DOB君のデザインは細かく変容しながら増殖を続け、多様な文脈に接続・侵入し、さまざまな領域を横断する村上の自画像のような存在になっていきました。

DOB君がモンスター化したような「たんたん坊」は、村上が子どものころ好きだった水木しげる作のマンガのキャラクターで、口から痰を吐く巨大な頭だけの妖怪が基になっています。その複雑怪奇なイメージには、原子力開発の発展に対する村上の個人的な不安が反映されています。さらに、村上の自画像の極限の姿とも言えるのが「ゲロタン」です。ゲロを吐いてのたうちまわる「ゲロタン」は、村上が国際舞台で活躍し始めた頃、プレッシャーに押しつぶされそうになる自分の情けない心情をキャラクターに合成して生まれたものです。これら複雑な構図の絵画には、伊藤若冲を参照した「十文字構図」や、視線の動きによって空間的な広がりを生む手法などが用いられ、キャラクターの表情とも相俟って画面にストリートを生み出すことが図られています。


727系、円相、抽象 | 達磨 | DOB君 | 五百羅漢図 - 「青竜」「白虎」 | 五百羅漢図 - 「玄武」「朱雀」


HOMEMENU


Copyright (C) Mori Art Museum, The Asahi Shimbun, NHK Promotions Inc. 2015-2016 All Rights Reserved.