展覧会

森美術館開館20周年記念展 ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会

みんなで学ぼう、アートと世界

2023.4.19(水)~ 9.24(日)

展覧会の構成:8つのセクション

1. 国語

「国語」のセクションでは、言葉や言語をテーマにした作品、文学や詩の要素を含む作品を紹介します。「言語」は、文学や詩といった表現に加え、現代アートでも、コンセプチュアル・アートの流れのなかで頻繁に使われてきました。コンセプチュアル・アートの提唱者のひとりであるジョセフ・コスース、また言語を取り巻く政治性や社会性を題材としたスーザン・ヒラー、国籍や人種、ジェンダーというアイデンティティをテーマとするミヤギフトシや、米田知子ワン・チンソン(王慶松)イー・イランの作品を展示します。

米田知子《谷崎潤一郎の眼鏡―松子夫人への手紙を見る》
米田知子
《谷崎潤一郎の眼鏡―松子夫人への手紙を見る》(「見えるものと見えないもののあいだ」シリーズより)
1999年
ゼラチン・シルバー・プリント
120×120 cm
所蔵:森美術館(東京)

2. 社会

本展で最も大きなボリュームを占める「社会」セクションでは、「社会彫刻」という概念を提唱したヨーゼフ・ボイスが来日した際に残した黒板から始まり、世界各地の歴史、政治、地理、経済、アイデンティティに関わる課題を取りあげます。1990年代以降、グローバル化する世界の各地域からアートが発信されるようになり、アーティストたちは正史とされる歴史や国家レベルの大きな物語からこぼれ落ちる個々の物語、あるいはマイノリティの視点を拾い上げ、世界の見方を増やし、多様化させていく役割を担っているといえるでしょう。美術史を主題としたアイ・ウェイウェイ(艾未未)森村泰昌、戦争や暴力、災害が残したものに向き合うディン・Q・レ藤井光畠山直哉、そして日本では初展示となるパーク・マッカーサーは都市のアクセシビリティをテーマとした新作を発表します。また、田村友一郎ク・ミンジャは、私たちの生活を取り巻く経済についての作品を展示します。

森村泰昌《モデルヌ・オランピア2018》
森村泰昌
《モデルヌ・オランピア2018》
2017-2018年
Cプリント、透明メディウム
210×300 cm
所蔵:森美術館(東京)
展示撮影:武藤滋生

3. 哲学

生きることや世界の真理、普遍性を探究する哲学の分野は、古くから美術と非常に深い関係にありました。人間が生まれ、生き、そして死ぬということの全てに哲学は関係し、それは美術も同様です。また、どちらも人生や世界の根本原理を解き明かそうとし、定まった答えのない問いに取り組み続けるという点も共通しています。本セクションでは、明滅するLEDのカウンターによって仏教的な死生観をあらわす宮島達男、ものの存在や周囲との関係性を追求してきた李禹煥(リ・ウファン)、そして奈良美智の祈りをささげているかのような少女を描いた絵画などを展示します。時間、自然、死後の世界、そこに「在る」ということ、そして信仰や救済といったテーマをもつ作品は、それぞれのアーティストが世界をどのように観察し、捉え、そして表現するのかを見せてくれるでしょう。

宮島達男《Innumerable Life/Buddha CCIƆƆ-01》
宮島達男
《Innumerable Life/Buddha CCIƆƆ-01》
2018年
発光ダイオード、電子回路、電線、スチール、ステンレス、変圧器、LED「Time Hundred」タイプ(赤)100プレート
251.7×251.7×15 cm
所蔵:森美術館(東京)
撮影:表 恒匡
画像提供:Lisson Gallery

4. 算数

算数あるいは数学は、極めてクリエイティブな領域でもあります。数字は多くのアーティストが扱ってきた普遍的なテーマである「時間」にも深く関係します。美術の歴史を振り返ってみると、ルネサンス期には芸術だけでなく、数学、科学、解剖学、天文学などの領域を横断したレオナルド・ダ・ヴィンチや、数学者としても知られたアルブレヒト・デューラーのような存在もあり、数学者のルカ・パチョーリが『神聖比例論』(1509年)で述べた黄金比は芸術とも深く関わっています。本セクションは、フィボナッチ級数をネオン管で表したマリオ・メルツの大型作品で幕を開け、片山真妃杉本博司、そして数学的な概念をパフォーマンスに投影した笹本晃の映像作品へと続きます。

杉本博司《観念の形 0010 負の定曲率回転面》
杉本博司
《観念の形 0010 負の定曲率回転面》
2004年
ゼラチン・シルバー・プリント
58.4×47 cm
Courtesy:ギャラリー小柳(東京)

5. 理科

物理、生物、化学など、自然科学の領域とも、現代アートは無関係ではありません。世界各地の生態系は、自ずとアーティストが作品に採用する素材に投影され、科学的な視点から見えてくる世界の法則や自然のすがたは、アーティストの創造性を刺激してきました。また、今日のグローバルな最重要課題のひとつである気候危機や環境問題も、アーティストたちが長らく警鐘を鳴らしてきたものです。さまざまな日用品が次々に連鎖反応を起こし、エネルギーを伝達してゆく様子を捉えたペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイス瀬戸桃子の映像作品、そしてナフタリンを用いた宮永愛子の新作や、ブラックライトを使用した田島美加の作品などを展示します。

サム・フォールズ《無題》
瀬戸桃子
《プラネットΣ》
2014年
ビデオ、サウンド
11分40秒(ループ)
所蔵:森美術館(東京)

6. 音楽

音楽は、空気の振動という意味では理科や算数と並び、科学的な領域でもあります。現代アートでは、音や音楽に関連する視覚的な要素を主題にする作品や、音や音響の意味や仕組みを考えさせるコンセプチュアル・アートがあり、実際に音を体験するもの、または音の不在を体感するものもあります。ジョン・ケージの《4分33秒》を流用するマノン・デ・ブールの映像作品は、ピアニストと観客の両方に焦点を当て、沈黙の時間を演出します。また、音楽は宗教的儀式にも使われるなどアイデンティティとも深い関係があります。アフガニスタンの夜景にイスラム教の詠唱が流れるアジズ・ハザラの詩的映像、旧ユーゴスラビアで内戦後に生まれた子供たちが「マジカル・ワールド」を歌うヨハンナ・ビリングの作品、黒人女性を想起させる手の動きやサウンドに焦点をあてたマルティーヌ・シムズの作品などを紹介します。

*前期と後期に分けて、スクリーニング形式で作品を上映します。

ヨハンナ・ビリング《マジカル・ワールド》
ヨハンナ・ビリング
《マジカル・ワールド》
2005年
ビデオ、サウンド
6分12秒(ループ)
Courtesy: Hollybush Gardens(ロンドン)

7. 体育

現代アートにおける身体的な運動や行動に着目した表現、身体そのものの作品化は、1960年代から「パフォーマンス」としてその位置づけを確立し、今日では映像作品の主題となることもしばしばです。クララ・リデンがバレエを通じて表現する規範と模倣など、アーティストは自身の身体を用いて多様なテーマを表現しています。また、クリスチャン・ヤンコフスキーの作品に見られるように歴史とそこからの解放といった「身体の政治性」を表象する役割を果たすこともあります。さらに本展では、競技が行われるスタジアムの建築的な特徴に注目したり、マスメディアで映し出されるスポーツにも焦点を当て、この科目がもつ社会への広がりも考察します。

*前期と後期に分けて、スクリーニング形式で作品を上映します。

クリスチャン・ヤンコフスキー《重量級の歴史》
クリスチャン・ヤンコフスキー
《重量級の歴史》
2013年
ビデオ、サウンド
25分46秒
Courtesy: Lisson Gallery

8. 総合

本展の作品はどれも、単一の科目や言葉、セクションといった枠組みに、すっかり収まってしまうようなものではありません。国語セクションの作品のなかにも数学的なテーマがあり、理科のなかにも社会的な課題が含まれています。最後のセクションである「総合」では、そうしたひとつの科目に収まらず、より幅広い領域を横断するような作品やプロジェクトを紹介します。現在、世界で最も注目を集めるアーティストのひとりであるヤン・ヘギュと、デンマークを中心に世界的に活躍するヤコブ・キルケゴールは、本展のための新作を発表します。また、演劇に基づいた方法論をもとに、東京という大都市の、日常的な景色を、私たち自身の意識によって変容させてゆく、高山明のプロジェクトを紹介します。

ヤコブ・キルケゴール《永遠の雲》
ヤコブ・キルケゴール
《永遠の雲》
2023年
サウンド・ビデオ・インスタレーション
サイズ可変
基本情報
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