ジャッカワーン・ニンタムロン(1977年、タイ・ロッブリー生まれ)は、短編・長編映画からドキュメンタリー、マルチチャンネル映像インスタレーションに至るまで、多様な映像形式を手掛けています。彼の映像作品は、仏教思想と生態学的な概念を、SFやシュルレアリスムのイメージに織り交ぜることで、人間の経験を支配する目に見えない力を探求します。そこでは、人々の生と経験が、いかに自然環境と社会条件に規定されているかがほのめかされています。
ニンタムロンにとって、汚染、腐敗、再生といったテーマは重要な関心事です。それらはしばしば、作品の主題にとどまらず、セルロイドフィルムという物理的な素材そのものに、文字通り体現されています。1960年代風の特殊効果を有機物によって作り出す手法や、あえて期限切れのフィルムを使うことで、投影される映像に劣化の質感を生み出し、映画空間における虚構的な没入から鑑賞者を引き離します。そうすることで、彼はむしろ映画というメディアに固有の視聴覚的な体験を強調し、自らの世界観を伝えます。
本展は、洪水により水没した世界を筏で漂う男を描いた《根茎(リゾーム)》(2022年)を軸に、3つの作品を上映します。微生物の増殖と拡散に適応することが、生存に不可欠となった世界を舞台とした《根茎(リゾーム)》は、異物の侵入が、環境を破壊するものというよりも、むしろ人間と人間以外の生物の双方にとって、その環境を創造する条件のひとつでありうることを示唆します。《腐敗の媒介者》(2025年)、《イントランジット》(2013年)とともに、ニンタムロンが映画というメディアの物質的・哲学的な可能性をいかに押し広げようとしているかをご覧いただけます。
上映作品
1. 《根茎(リゾーム)》2022年 29分13秒
2. 《腐敗の媒介者》2025年 5分17秒
3. 《イントランジット》2013年 4分39秒
「MAMスクリーン024」上映のご案内
■本プログラムの上映時間
18:00~22:00
※本プログラムは全体で約39分です。
■上映時間の変更について
本プログラムは、毎週火曜日および以下の日時は作品をご覧いただけません。あらかじめご了承ください。
・毎週火曜日
・11月27日(金)終日
※日時が追加される場合があります。
《根茎(リゾーム)》
2022年
ビデオ
29分13秒
Courtesy: Mit Out Sound Films, Bangkok
《根茎(リゾーム)》
2022年
ビデオ
29分13秒
Courtesy: Mit Out Sound Films, Bangkok
《腐敗の媒介者》
2025年
16ミリフィルム(ビデオに変換)
5分17秒
Courtesy: Mit Out Sound Films, Bangkok
《腐敗の媒介者》
2025年
16ミリフィルム(ビデオに変換)
5分17秒
Courtesy: Mit Out Sound Films, Bangkok
《イントランジット》
2013年
35ミリフィルム(ビデオに変換)
4分39秒
Courtesy: Mit Out Sound Films, Bangkok
《イントランジット》
2013年
35ミリフィルム(ビデオに変換)
4分39秒
Courtesy: Mit Out Sound Films, Bangkok
ジャッカワーン・ニンタムロン
1977年、タイ・ロッブリー生まれ。現在はバンコクを拠点に活動。これまでベルリン国際映画祭(2014年)、トロント国際映画祭(2014年)、ロッテルダム国際映画祭(オランダ、2015年)、東京フィルメックス(2021年)、ベネチア国際映画祭(2021年)、釜山国際映画祭(2022年)をはじめ、数多くの映画祭で作品を上映。また、長編映画や映像インスタレーションを含む作品群は、ソウル・メディアシティ・ビエンナーレ(2014年)、ダッカ・アート・サミット(バングラデシュ、2018年)、パラサイト(香港、2018年)、KW現代美術インスティテュート(ドイツ、2021年)、バンコク・アート・ビエンナーレ(2022年)、済州ビエンナーレ(韓国、2024年)、光州ビエンナーレ(韓国、2024年)など、国内外の美術館と展覧会で発表されている。主な受賞歴に、ユネスコ・アシュバーグ文化振興基金(2007年)、ロッテルダム国際映画祭ハイボス・タイガー賞、東京フィルメックス グランプリ(2021年)など。2009年より、バンコクのタマサート大学ジャーナリズム・マスコミュニケーション学部にて、映画分野の講師を務める。


