展覧会

森万里子:燦燦

2026.10.31(土)~ 2027.3.28(日)

本展の構成

展覧会はゆるやかな年代順およびテーマ別の5セクションで構成されます。

1. ポスト・ヒューマンから秘境の体験へ

1990年代半ば以降に大きな注目を浴びた《スター誕生》(1995年)や「サイボーグ」シリーズ(1994-1995年)などでは、アニメ、ビデオゲーム、コスプレ、ファッションが先駆的に採用され、作家自身が日常の都市環境の中に「ポスト・ヒューマン」の女性として登場しています。これらは、現在と未来、人間と非人間、サイボーグといった存在の領域を揺さぶるものでした。その後、森の関心は仏教の宇宙観へ拡がり、「エソテリック・コスモス」シリーズ(1996-1998年)などの大規模な平面作品が国外を中心に発表されました。ここでは高度なデジタル・イメージング技術が用いられ、秘境の地を背景に、仏教の図像に基づいた神格化された姿で自身が演出されています。一種の聖域として構想されたビデオ・インスタレーション作品《リンク》(2000年)は、透明なアクリル製のボディ・カプセルの中に横たわる、静止した森自身の姿を映し出します。その背景には、人類の「過去・現在・未来」を象徴する、世界13カ所の象徴的な風景が投影されています。森は、直線的な時間の概念を覆すような感覚を鑑賞者に提示し、生と死が絶え間なく循環する、仏教の「輪廻転生」の概念を具現化しています。さらに森のアプローチは、アートを「拡張された意識への入り口」と捉える新しい転換点を迎えます。これらの作品の華やかな外見の裏には、進化し続ける精神性への信念が暗喩されています。

森 万里子《スター誕生》
森 万里子
《スター誕生》
1995年
3Dデュラトランス・プリント、アクリル、ライトボックス、オーディオCD
183×122 cm
音声:3分20秒
森 万里子《スター誕生》
森 万里子
《スター誕生》
1995年
3Dデュラトランス・プリント、アクリル、ライトボックス、オーディオCD
183×122 cm
音声:3分20秒
森 万里子《プレイ・ウィズ・ミー》
森 万里子
《プレイ・ウィズ・ミー》
1994年
フジ・スーパーグロスプリント、木、アルミニウム、ピューターフレーム
304.8×365.8×7.6 cm
森 万里子《プレイ・ウィズ・ミー》
森 万里子
《プレイ・ウィズ・ミー》
1994年
フジ・スーパーグロスプリント、木、アルミニウム、ピューターフレーム
304.8×365.8×7.6 cm
森 万里子 《エソテリック・コスモス:ピュア・ランド》
森 万里子
《エソテリック・コスモス:ピュア・ランド》
1996-1998年
写真、ガラス(インターレイヤー)、ステンレススチール
304.8×609.6×2.2 cm
森 万里子 《エソテリック・コスモス:ピュア・ランド》
森 万里子
《エソテリック・コスモス:ピュア・ランド》
1996-1998年
写真、ガラス(インターレイヤー)、ステンレススチール
304.8×609.6×2.2 cm

2. テクノスピリチュアルな空間体験から、人類を繋ぐ「ワンネス」へ

この後、森のテクノロジーへの関心はさらに発展し、中期のプロジェクトでは、国際的な科学者や研究所との協力により開発された高度な計算技術を活用し、没入型環境が作品化されていきます。立体作品として最大規模の《Wave UFO》(1999–2002年)は、脳波バイオフィードバックを用いた革新的な作品の一つです。鑑賞者は勾玉型の有機的形体のポッドに入り、自身と他者の脳波がひとつになる投影映像へと変換される体験をします。(※1)これは21世紀に入り、世界各地で分断が広がるなか、森が2000年代初めから提唱する全人類の繋がり、「ワンネス」という概念を具現化したものでもあります。《Wave UFO》内のCG映像《コネクティッド・ワールド》では、深層意識との繋がりが視覚化されています。

※1 「森万里子:燦燦」では、《Wave UFO》内部の体験鑑賞枠には限りがあります。

森 万里子《Wave UFO》(内部)
森 万里子
《Wave UFO》(内部)
1999-2002年
脳波インターフェース、ビジョンドーム、プロジェクター、コンピュータシステム、グラスファイバー、テクノジェル、アクリル、カーボンファイバー、アルミニウム、マグネシウム
528×1,134×493 cm
撮影:トム・パウエル
森 万里子《Wave UFO》(内部)
森 万里子
《Wave UFO》(内部)
1999-2002年
脳波インターフェース、ビジョンドーム、プロジェクター、コンピュータシステム、グラスファイバー、テクノジェル、アクリル、カーボンファイバー、アルミニウム、マグネシウム
528×1,134×493 cm
撮影:トム・パウエル

3. いにしえの未来

2004年以降、森は新石器時代のケルト文化や縄文文化の世界観にインスピレーションを得たプロジェクトを展開するようになります。ケルト文化において先祖の霊魂が転生する場を意味する《トムナフーリ》(2006年)は、東京大学宇宙線研究所のニュートリノ観測施設「スーパーカミオカンデ」からのリアルタイム・データによって発光する、トーテム状の立体作品です。太陽や地球の大気、遠方の超新星から発生するニュートリノに反応し、目に見えない宇宙の出来事を光の明滅へと変換することで、人智を超えた自然現象と鑑賞者を結びつけます。また、沖縄県の久高島、秋田県にある縄文時代のストーンサークル、大湯環状列石の写真作品や、縄文中期から後期の敷石住居などのリサーチから生まれた《フラット・ストーン》(2006年)も展示されます。昨年ニューヨークで発表されたインスタレーション《お社》(おやしろ)も展示され、内部に置かれた立体は日本神話に登場するオノコロ島の上立神岩や、熊本県の押戸石などをモチーフにしています。

森 万里子 《トムナフーリ》
森 万里子
《トムナフーリ》
2006年
ガラス、ステンレス、LED、リアルタイム制御システム
327.4×115.3×39.6 cm
撮影:リチャード・リーロイド
画像提供:SCAI THE BATHHOUSE(東京)
森 万里子 《トムナフーリ》
森 万里子
《トムナフーリ》
2006年
ガラス、ステンレス、LED、リアルタイム制御システム
327.4×115.3×39.6 cm
撮影:リチャード・リーロイド
画像提供:SCAI THE BATHHOUSE(東京)
森 万里子《フラット・ストーン》
森 万里子
《フラット・ストーン》
2006年
陶、アクリル
石:487.5×314.6×8.8 cm
壺:38.1×27.9×43.2 cm
所蔵:SCAI THE BATHHOUSE(東京)
展示風景:「ワンネス」ピンチュク・アートセンター(キーウ)2008年
撮影:リチャード・リーロイド
森 万里子《フラット・ストーン》
森 万里子
《フラット・ストーン》
2006年
陶、アクリル
石:487.5×314.6×8.8 cm
壺:38.1×27.9×43.2 cm
所蔵:SCAI THE BATHHOUSE(東京)
展示風景:「ワンネス」ピンチュク・アートセンター(キーウ)2008年
撮影:リチャード・リーロイド
森 万里子《お社》(部分)
森 万里子
《お社》(部分)
2025年
絹、アルミニウム、木、ダイクロイック・コーティングされたアクリル彫刻(2点)、コーリアン台座
190×920×480 cm
展示風景:「森万里子:ラディアンス」ショーン・ケリー(ニューヨーク)2025年
撮影:ジェイソン・ワイシュ
画像提供:ショーン・ケリー(ニューヨーク)
森 万里子《お社》(部分)
森 万里子
《お社》(部分)
2025年
絹、アルミニウム、木、ダイクロイック・コーティングされたアクリル彫刻(2点)、コーリアン台座
190×920×480 cm
展示風景:「森万里子:ラディアンス」ショーン・ケリー(ニューヨーク)2025年
撮影:ジェイソン・ワイシュ
画像提供:ショーン・ケリー(ニューヨーク)

4. 自然界とつながる

展示の締めくくりとして、森が2010年に設立したFaou 公益財団の活動を紹介します。「Faou」は「創造する力」を意味する造語で、同財団の活動は世界6大陸において、それぞれの地域コミュニティの協力を得ながら、宇宙や天空の動きとも連動したパブリックアート作品を設置しています。そして、その目的は自然環境という地球の宝の中で、自然と人間の関係への意識を高めようとするものです。2011年には宮古島に《プライマル・リズム:サンピラー》が、2016年にはリオデジャネイロに《リング:自然とひとつに》が恒久設置されました。また、エチオピアでの設置が計画されている《ピース・クリスタル》が、2024年にベネチアで発表されています。本展では、森が宮古島に建てたアトリエ「ユプティラ」(宮古言葉で豊かさを表すユプと太陽を表すティダを融合した名前)から見える海の風景、《プライマル・リズム:サンピラー》、《リング:自然とひとつに》など、美術館空間に収まらない活動をまとめた新作映像を大型LEDディスプレーで展示します。

森 万里子《プライマル・リズム:サンピラー》
森 万里子
《プライマル・リズム:サンピラー》
2011年
積層アクリル、ステンレススチール、コンクリート
420×φ76 cm
Courtesy:Faou公益財団(ニューヨーク)
展示風景:宮古島七光湾(沖縄)
撮影:リチャード・リーロイド
森 万里子《プライマル・リズム:サンピラー》
森 万里子
《プライマル・リズム:サンピラー》
2011年
積層アクリル、ステンレススチール、コンクリート
420×φ76 cm
Courtesy:Faou公益財団(ニューヨーク)
展示風景:宮古島七光湾(沖縄)
撮影:リチャード・リーロイド
森 万里子《リング:自然とひとつに》
森 万里子
《リング:自然とひとつに》
2016年
積層アクリル、ステンレススチール、コンクリート
618×φ300 cm
Courtesy:Faou公益財団(ニューヨーク)
展示風景:クナンベベ州立公園(ブラジル、リオデジャネイロ州)
撮影:ステファニー・レアル
森 万里子《リング:自然とひとつに》
森 万里子
《リング:自然とひとつに》
2016年
積層アクリル、ステンレススチール、コンクリート
618×φ300 cm
Courtesy:Faou公益財団(ニューヨーク)
展示風景:クナンベベ州立公園(ブラジル、リオデジャネイロ州)
撮影:ステファニー・レアル
森 万里子《ピース・クリスタル》
森 万里子
《ピース・クリスタル》
2016-2024年
クリスタル・ガラス、ステンレススチール
167.3×φ100.7 cm
Courtesy:Faou公益財団(ニューヨーク)
展示風景:パラッツォ・コルネル・デッラ・カ・グランダ(イタリア、ベネチア)2024年
撮影:マルタ・ブソ
森 万里子《ピース・クリスタル》
森 万里子
《ピース・クリスタル》
2016-2024年
クリスタル・ガラス、ステンレススチール
167.3×φ100.7 cm
Courtesy:Faou公益財団(ニューヨーク)
展示風景:パラッツォ・コルネル・デッラ・カ・グランダ(イタリア、ベネチア)2024年
撮影:マルタ・ブソ

5. 森万里子のアーカイブとスタジオ

展覧会場の、「アーカイブ」と「スタジオ」の各スペースでは、資料が展示されます。「アーカイブ」では、森万里子の略歴が、初期のモデル時代の写真、展覧会の展示風景、パフォーマンス映像から数多くの出版物や掲載誌、展覧会評まで、豊富な資料を通してご覧いただけます。また「スタジオ」では、森が日々の実践として続けるドローイング、アイディアスケッチ、リサーチノート、森個人のコレクションである古代のオブジェクトなどが紹介されます。

本展開催に際して、本展キュレーターのアレクサンドラ・モンローと片岡真実が共同編集する、展示風景を含めたカタログ(日本語版・英語版)が刊行されます。

※輸送状況その他やむを得ない事情により、展示内容・作品が変更となる場合があります。

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