MAMCメールニュースを試し読み!館長のアートワールドお土産話
2025.6.4(水)
「MAMC(マムシー)」は、森美術館のメンバーシップ・プログラムです。
メンバー限定でお届けしているメールニュースでは、現代アートをより深く楽しんでいただくためのコラムを定期的に配信しています。
館長・片岡真実が世界各地を訪れながら出会った現代アートや美術館を紹介し、その背景にある歴史や現在の動向を交えて紹介する「館長のアートワールドお土産話」もそのひとつです。
今回は特別に、こちらの人気シリーズの「香港編」を公開いたします。ぜひお楽しみください!
「館長のアートワールドお土産話」香港編
今日のアート界は、美術館だけでなく、ビエンナーレやトリエンナーレといった国際芸術祭、さらには各地から商業ギャラリーなどが集まって作品を販売するアートの見本市(アートフェア)が三つ巴になって共存しています。国際芸術祭は数カ月から半年程度、アートフェアは数日間の開催ですから、アート関係者はそれらをカレンダーに書き込んで、一度にいろいろ見られるタイミングに旅をします。近年では都市ごとにアートイベントを一時期に集約する「アートウィーク」といったコンセプトが広がっています。例えば、シンガポールは1月、ソウルは9月、台北は10月にそれぞれ「アートウィーク」を位置づけ、アートフェアやビエンナーレの時期を合わせて国内外からの観客誘致に取り組んでいます。


3月に香港で開催されるアート・バーゼル香港は、アジア最大級のアートフェアです。香港はアートウィークとは呼んでいませんが、この一大フェアにあわせて多くのアートイベントが開催され、各美術館も主要展覧会をこの時期に合わせます。そもそも1970年にスイスのバーゼル市で始まった「アート・バーゼル」ですが、2002年にマイアミ・ビーチ、2013年に香港でも開催されるようになり、アートフェアの一大ブランドとなりました。2022年に創設されたアート・バーゼル・パリも注目されています。
今年のアート・バーセル香港は3月28日から30日まで開催されましたが、美術館やコレクターなど関係者は26日のお昼から「First Choice」という特別内覧が始まるので、早めに香港入り。これにあわせて世界各地の美術館関係者との朝食ミーティングに始まり、日中は香港中のギャラリーやアートスペースを見て、夜はディナーやパーティと、大忙しになるので、みんなアートウィークではなく、“クレイジーウィーク”と呼んだりしています!


私は今回、ハン・ネフケンス財団、M+、シンガポール美術館、森美術館による映像作品の共同コミッション選考会議のために3月21日に香港に入り、その後、23日に森美術館メンバー4名と合流、24日には森京子理事長とキュレーターの徳山拓一さんも加わり、2022年に開館したアジア最大級の美術館M+やCHAT、大館といった現代アートを扱うアートセンター、そしてアート・バーゼル香港など香港アート事情を7名で視察してきました。


アート・バーゼル香港は、240ギャラリー以上の参加がありましたが、加えてアーティスト18人の大型作品が披露される「エンカウンター」セクションが見物です。今年は森美術館の「マシン・ラブ」展に出展中のルー・ヤン(陸揚)が最新作《独生独死―創造者》(2025)を発表。生成AIによる画像をさらに増え、圧倒的な質の高さを誇っていました。今後の展開に目が離せません。他にも大変見応えがある作品にたくさん出会いました。こうした調査を重ねて、将来の展覧会や六本木アートナイトへの出品作などが選ばれていくのです。


文:片岡真実(森美術館 館長)
香港編はいかがでしたか? MAMCメールニュースでは、館長のお土産話シリーズをはじめ、森美術館キュレーターによる出張レポートや展覧会のみどころ紹介など、今後も様々なコラムを配信予定です。森美術館メンバーシップ・プログラム MAMCの詳細については以下リンク先をご確認ください。
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