2010年9月24日(金)

「復活(REBIRTH)」とは人間が本当の意味で「考える葦」になること~伊勢谷友介のREBIRTH論に迫る(2)

伊勢谷友介さんと当館のチーフキュレーター・片岡による対談は、現在の伊勢谷さんの活動における経緯や、根底にある考えに話題を変え展開していきます。前回のお話では「ネイチャー・センス展」と「REBIRTH PROJECT」が、昨今のエコに対する考え方や環境問題に対する関心などではなく、もう少し先を見据えている点で共通しているのが、ブックラウンジの空間デザインをお願いした理由であるという内容でした。


ネイチャー・ブックラウンジ、撮影:渡邉 修

片岡:「REBIRTH PROJECT」についてまだご存じない方もいるかもしれないので、「REBIRTH PROJECT」立ち上げの経緯などから、教えてもらっていいでしょうか。

伊勢谷:何か僕は最近、いろいろなベクトルから物事を考えて、その結果今に至っているような感じがして。例えば、親類を含めた周りにいる人間たちと幸せにつき合いたいと思いますよね。ただ、それは意外と難しい。人間社会の中で人間関係のことで悩むのは普通のことなんですが、僕の中での解決策としては、1つの方向性があります。自分以外の人のことを考えてあげて、言葉にしろ何にせよ、要は愛情を持って接していくと、それが自分に返ってきて、自分というキャラクターをつくる。自分の立ち位置に戻るというわけですね。

それは対・人間であるし、それが1人の地球上に生きる生物、1人というか、人間という種である生物とすると、じゃあ、今度は人間が永続的に地球に生きるための方法として、どういうカタチがあるのか。やっぱり、それもエゴとして自然を守ろうということではないと思うんです。僕らはこの地球上の中で、自分たちが生きるための環境を維持するために、自分たちの生活をちゃんと知をもって変革していく作業が必ず必要になるなと。それも人に対する愛情のように、自然界に対して自分たちの生活をコンパクトにしていくというか、効率よくしていくというのが理想だと感じています。

僕は、過去に戻るのは不可能だと思っているので、現在から未来に向かって、どんなスタンスがあり得るのかというのを模索するのが「REBIRTH PROJECT」です。対・人間にしても、対・地球にしても結局、「自分以外のことを考えることによって自分を生かしていく」ということだと思ったから、それが「REBIRTH PROJECT」の根底にあるんじゃないかなと。今はそう思います。

片岡:「REBIRTH 」というのは、どういう意味でのREBIRTH なんでしょうか?

伊勢谷:過去における民族というのは、自然崇拝だったりとか、自分の環境において、「ここまではいいけれど、ここまではやっちゃだめ」というのを、常に持っていたと思うのです。その理屈を、分かっている人もいたけれど、そうでない人がほとんどだったから、「これはよし、これは悪い」とか、宗教的に区切っていったのではないでしょうか。そして、僕らはいつの間にか西洋文明に乗っかったりして、その尺度を取っ払ってしまっていると思うのです。


REBIRTHに込めた想いを語る伊勢谷友介さん

つまり、日本が古来のいい部分というのも全部ぶっ飛ばして、ここに至っているという点ですね。それをどこかで取り戻しながら、本当の知識として数字として、僕らもわかるところまで来ているので、次へ発展する形というのはつくりやすいはず。本来すでになくちゃいけないと思っています。それを実行に移すこと自体が、人間の知能の形であるというところまで、ぼちぼち持って行ってもいいんじゃないか。僕らの掲げるREBIRTHの言葉にはそんな意味が込められています。

片岡:なるほど。

伊勢谷:だから「復活」としては、人間が本当の意味で「考える葦」になっていかなくちゃいけないということが、多分、僕の中で復活だと思っているんです。

片岡:そうですね。例えば、祟りみたいなものとか、そういう文化って、ものすごくたくさん日本の中にあったと思うけれど...。

伊勢谷:呪いとか。

片岡:そうそう。だから、それはやっぱり伊勢谷くんが言ったみたいに、近代化とか都市化という中で、あまり日々の生活の中では関係なくなっていって。でも、今でもいろいろな地方の聞き語りとか、おばあさんの話とかを聞くと、そういう話はちゃんと残ってはいるんだけれど。

私はやっぱりコンピュータが解析できない部分というのが、実はいまだにたくさんあって、その部分をきちんと拾い上げていくことで、多分、ものすごく、何だろうな、人間の感覚は豊かになっていくんじゃないかなという気はしているのね。

伊勢谷:僕の考えだとね、それをいきなりフッと投げかけても拒否反応なんですよ。今の現代人は、どこに投げても、どこのビジネス世界でも、普通の生活の中でも。だから、僕らは実質的にそれを浸透させていかなきゃいけないので、無理なものを投げかけるよりも、いい形で導入していってあげるというか、導いてあげなくちゃいけなくて、そこの形というのは、やっぱり一番わかりやすいのは数字だったりとかするんですよね。

圧倒的にそれじゃあ無理だということがわかったら次の行動をせざるを得ないというところに持って行ってあげて、その結果が呪術だったりとか、なぜそこの人たちがそういう方向性にいったか、など階段が必要だなと、僕は今すごく思っていて。

だから、みんなに商品を選んでもらうことが環境活動になっていったり、自分の生活を守ることに繋がるブランドを提案し続けていきたい。その先々に、例えば、ビジネスというよりもREBIRTHの考え方をビジュアル化するコンセプトを提案したいですね。

片岡:なるほど。では、そのREBIRTHの考え方を広めていく中で、伊勢谷くんが目指している、「リバース・ビレッジ」について、どんなイメージを持っているのかを教えていただいてよろしいですか?

≪次回 第3回 47都道府県の失われゆく技術にもう一度光を当てる へ続く≫
 

【伊勢谷 友介】
1976年東京生まれ。1994年東京芸術大学入学後、1997年よりアートユニット「カクト」として制作活動を開始。1999年俳優としての活動も開始。2002年東京芸術大学大学院卒業。2003年「カクト」(劇場公開映画)を監督。2008年株式会社「REBIRTH PROJECT」設立。
 

<関連リンク>
・連続対談:伊勢谷友介のREBIRTH論に迫る
第1回 「ネイチャー・センス展」と「REBIRTH PROJECT」が共にする想い
第2回 「復活(REBIRTH)」とは人間が本当の意味で「考える葦」になること
第3回 47都道府県の失われゆく技術にもう一度光を当てる
第4回 俳優、アーティスト、事業家...伊勢谷友介の目指す姿とは?
第5回 白洲次郎を演じるなかで浮かび上がった新たな思い
第6回「ああしたい」「こうしたい」を実現する元気玉プロジェクト(仮)
第7回 何足のわらじでも履いてやる

・連載インタビュー:ネイチャー・センス展を目前に(全4回)
第1回 日本の自然観を再考し、日本固有の文化を紐解く
第2回 「自然(しぜん)から「自然(じねん)」へ
第3回 「作家が紡ぎ出す、抽象化された自然のインスタレーション
第4回 「ネイチャー•センス」喚起!見えてくる日本のカタチ

「ネイチャー・センス展: 吉岡徳仁、篠田太郎、栗林 隆
 日本の自然知覚力を考える3人のインスタレーション」

 会期:2010年7月24日(土)~11月7日(日)

カテゴリー:01.MAMオピニオン
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