2011年12月15日(木)

そして迎えた1960年 「メタボリストが語るメタボリズム」(2)

メタボリストが一堂に会し、第1回シンポジウム「メタボリストが語るメタボリズム」。連載2回目は、槇 文彦さんと大髙正人さんが《新宿副都心計画》を作った1960年をはじめ、メタボリストたちが20代~30代だった1950年~1960年代。当時を振り返り、さまざまなエピソードが語られました。
[出演者:栄久庵憲司(インダストリアル・デザイナー)、神谷宏治(建築家)、菊竹清訓(建築家)、槇 文彦(建築家)モデレーター:内藤 廣(建築家)]


左から栄久庵憲司さん、槇 文彦さん、神谷宏治さん、菊竹清訓さん、内藤 廣さん
撮影:御厨慎一郎

内藤:1960年というと川添登さんが34才、菊竹さんが32才。黒川さんが26才、槇さんが32才、大髙さんが5つ上の37才ですね。神谷さんも槇さんと同じ32才で、栄久庵さんが31才、浅田さんがちょっと上で、39才でいらっしゃった。丹下さんが47才。それが1960年という断面です。今から考えると若いですよね。今どきの30才前後の人、今日は会場にたくさんいると思いますけど、大丈夫ですかね?(笑)ともかくそういう若い力が、どんどん出てくる時代だったんだと思います。時代が若かったといえばそれまでですけど、様々なクリエーションが、吹き出すように出てきている時代だったのだと思います。その頃の丹下さんはどんなふうだったか、神谷さん、エピソードをお聞かせいただけますか?

神谷:一言言っておかなければいけないのは、私は今日の出演者の中で唯一メタボリストではありません。今日は丹下先生の代わりに、当時何を考え、何をしていたかということを、ご紹介するためにここに座っているわけです。メタボリズムの運動が起こり始めた時、丹下さんはかなり好意的に見ていらっしゃいました。自分の弟子たちに相当する年代の人たちを暖かい目で見ていたけれども、しかし自分の立場はそれとちょっと違うよ、と考えていらっしゃいました。その違いが何であったかは、後でご説明したいと思います。

内藤:菊竹さん、ちょうどスカイハウスができた後、50年代頃というのはどんな感じだったか、コメントをいただけますでしょうか。


1950年代当時を語る菊竹清訓さん
撮影:御厨慎一郎

菊竹:50年代の初めの頃は、みなさまとはちょっと様子が違っておりました。私が置かれていた状況というのは,一般的な設計事務所の仕事とはだいぶ違っていて、当時は,古い木造建築のリニューアルをどうするかというようなことを手がけておりました。ですから、初めから何かどこかから新しいものを持ってきて計画をやろうという気持ちは全然なかったんです。

内藤:ちょっとご説明しますと、初期の菊竹事務所ではブリヂストンの関係の仕事が多くて、古い工場の施設などを解体して、もう一回、別の場所に組み立て直すといった仕事を、建築家として本当に駆け出しの頃にやられていたんですね。その体験が、後に展開される菊竹さんの取り替え理論や新陳代謝といったメタボリズムの中心を成す考え方に進化していくわけですね。

菊竹:はい、そうです。何を新しい、と考えるか。木造の建築物では、新しく作り替えるということは別に新しい理論でもなんでもなく、日本では昔からある考え方です。古い建物をどうやったら新しくできるか。これは言葉で言えば簡単なようですけれど、大変厄介な話でもあります。

内藤:1958年の《海上都市》では、今いわれたような建築的な話から、さらに都市的な話に関心が移っていらっしゃいますよね。取り替える、新陳代謝するといったことと、やはり関係しているんでしょうか?


菊竹清訓《海上都市 1963》 1963年/1980年代(模型)
制作:植野石膏模型製作所 885 x 620 x 620 mm
所蔵:菊竹清訓 画像提供:菊竹清訓

菊竹:非常に関係があります。いろいろな事柄に向き合い、常に模索していました。当時は毎年のように河川が氾濫して日常生活を脅かすわけです。そのことは大きなテーマでした。まずそういうことを解決しなければ、都市問題をうまく処理することはできないわけです。それで関心がしだいに都市的なものへと向かったのだと思います。

内藤:日本は地震とか津波とか、河川の氾濫とか、常に災害によって新しく変わっていくわけですね。そこに都市的なスケールでの取り替えや新陳代謝のシステムを見いだされたということだと思います。
 

<関連リンク>

・シンポジウム第1回「メタボリストが語るメタボリズム」
第1回 1960年前後、日本建築会の風景
第2回 そして迎えた1960年 第3回 それは廃墟のイメージから始まった
第4回 「世界デザイン会議」とメタボリズム
第5回 メタボリズムと時代精神
第6回 今、メタボリズムを考えることの意義
第7回 丹下健三とメタボリズム

「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」
会期:2011年9月17日(土)~2012年1月15日(日)

展示風景「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」

一分でわかるメタボリズム

カテゴリー:01.MAMオピニオン
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