ティモテウス・アンガワン・クスノ(1989年インドネシア・ジョグジャカルタ生まれ、アムステルダム在住)は、植民地主義の歴史とその記憶をめぐる問いを、映像・写真・インスタレーションを横断した実践を通じて探究するアーティストです。その作品は、正史の記述が内包する権力構造と恣意的な操作を批判的に検証しながら、フィクションとドキュメンタリーの境界を意図的に撹乱することで、「歴史的真実」の脆弱性を問い直します。
「MAMコレクション022」では、森美術館コレクションの《ノスタルジーの解体》(2024年)に最新映像作品を含む2点を加え、クスノの多様な実践を紹介します。《ノスタルジーの解体》は、アーカイブ・プリント、油彩・アクリル絵具、ロープ、金属装置を組み合わせた作品です。人々と自然が調和する懐かしい山野の風景を描き、植民地をロマン化した「ムーイ・インディ(麗しの東インド)」と呼ばれる絵画が、いかに植民地支配の暴力や不平等を覆い隠してきたかを明らかにします。同じく植民地支配を題材とした写真シリーズ《時の空白》(2024年)と、最新映像作品《ソラ・ファータ》(2025年)では、過去を美化する眼差しが歴史的事実を歪め、独裁や植民地政権へのノスタルジアとして今日の社会に潜在し続ける危うさを、クスノは批評的に問いかけます。
※《ノスタルジーの解体》(2024年)は森美術館東南アジア・コレクターズ・サークル(SEACC)購入作品です。SEACCは、2017年の展覧会「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」を機に培ったネットワークを継続するため、2023年に設立された東南アジアのコレクターによるサポート・グループで、キュレーターの現地リサーチおよび作品購入を支援しています。
《ノスタルジーの解体》
2024年
ミクスト・メディア
南アジアコレクターズサークル(SEACC)2024年購入
Photo Courtesy: kohesi Initiatives
《ノスタルジーの解体》
2024年
ミクスト・メディア
南アジアコレクターズサークル(SEACC)2024年購入
Photo Courtesy: kohesi Initiatives



