歴史の力に押し出されるように、あるいは生きるための選択として生まれた土地や国を離れ、異国へと移住・定住した人々やその子孫を「ディアスポラ」と呼びます。
現在、世界各地で移民・難民が増加し、多文化主義への反動とナショナリズムの波が高まるなかで、そうした人々の存在が、かつてなく切実な意味を帯びています。とりわけ隣国の韓国では、植民地支配、朝鮮戦争、独裁政権と民主化、急速な経済発展、グローバル化という激動の歴史を背景に、アジアのなかでも数多くのディアスポラが生み出されてきました。しかしこれまで「コリアン・ディアスポラ」の存在は、国家や民族という固定した枠組みで語られることが多く、その多様性と流動性は十分に認識されてきませんでした。
本展では、韓国から異国へと渡った、またはルーツを持つ3名のアーティストの作品と関連資料を通じて、20世紀から21世紀におけるコリアン・ディアスポラの軌跡をたどります。日本へと渡ったクァク・インシク(1919年現在の韓国・大邱広域市生まれ、1988年東京にて没)、ドイツへと渡ったソン・ヒョンスク(1952年韓国・全羅南道生まれ、ドイツ・ハンブルク在住)、韓国にルーツを持ち、カザフスタンに生まれたアレキサンダー・ウーガイ(1978年カザフスタン・クジルオルダ生まれ、アルマトイおよびソウル在住)は、それぞれ異なる地政学的文脈のなかで、国家と個人の記憶の交差、移住とアイデンティティの葛藤、故郷と異郷の揺らぎを、独自の表現で探求してきました。これら異なる土地に生き、異なる言語と文化のあいだで創り続けたアーティストたちの作品とライフヒストリーに向き合うとき、ディアスポラの経験は単なる喪失や断絶でないことが見えてくることでしょう。複数の地域・言語・文化を横断してきた3名のアーティストの実践を通じて、境界を越えて重なる記憶を新たな視点で捉え直します。
《Work 85 (unknown)》
1985年
所蔵:GalleryQ(東京)
画像提供:GalleryQ
《Work 85 (unknown)》
1985年
所蔵:GalleryQ(東京)
画像提供:GalleryQ
《無題(母の写真)》
2025年
《無題(母の写真)》
2025年
《1の筆触の上に8の筆触 2004年5月5日》
2004年
所蔵:森美術館(東京)
《1の筆触の上に8の筆触 2004年5月5日》
2004年
所蔵:森美術館(東京)
撮影:片山摂三
画像提供:GalleryQ
撮影:片山摂三
画像提供:GalleryQ
撮影:Timo Ohler
画像提供:Galery Sprüth Magers
撮影:Timo Ohler
画像提供:Galery Sprüth Magers



