ロン・ミュエク(1958年オーストラリア生まれ、英国在住)は、革新的な素材や技法、表現方法を用いて具象彫刻の可能性を押し広げてきた現代美術作家です。ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催された「センセーション:サーチ・コレクションのヤング・ブリティッシュ・アーティスト」展(1997年)への参加で注目を集めて以来、世界各地で個展を開催してきました。
人間を綿密に観察し、哲学的な思索を重ねて制作されたミュエクの作品は、洗練され、生命感に溢れ、孤独、脆さや弱さ、不安、レジリエンスといった人間の内面的な感情や体験を巧みに表現しています。実際の人物よりもはるかに大きく、あるいは小さく造られるその彫刻は、スケールの相対性や私たちの知覚に対する先入観への挑戦でもあります。神秘的でありながら圧倒的な存在感を放ち、私たちと身体との関係、そして存在そのものとの関係を問いかけます。
本展は、作家とカルティエ現代美術財団との長きに渡る関係性によって企画されたもので、2023年パリの同財団での開催を起点とし、ミラノとソウルを経て、森美術館で開催されます。日本では、2008年に金沢21世紀美術館で回顧展が開催されて以来、2度目の個展になります。大型作品を中心に、初期の代表作から近作まで10点あまりを展示。フランスの写真家・映画監督のゴーティエ・ドゥブロンドによる作家のスタジオと制作作業を記録した貴重な写真作品と映像作品も併せて公開し、作家の制作を包括的に紹介します。

《枝を持つ女》
2009年
ミクストメディア
170×183×120 cm
所蔵:カルティエ現代美術財団
展示風景:「ロン・ミュエク」韓国国立現代美術館ソウル館、2025年
撮影:ナム・キヨン
画像提供:カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館

《枝を持つ女》
2009年
ミクストメディア
170×183×120 cm
所蔵:カルティエ現代美術財団
展示風景:「ロン・ミュエク」韓国国立現代美術館ソウル館、2025年
撮影:ナム・キヨン
画像提供:カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館
開催概要
ロン・ミュエク展
会期 | 2026年4月29日(水・祝)~9月23日(水・祝) |
---|---|
主催 | 森美術館、カルティエ現代美術財団 |
企画 | 近藤健一(森美術館シニア・キュレーター) チャーリー・クラーク(本展アソシエイト・キュレーター) キアラ・アグラディ(カルティエ現代美術財団キュレーター) |