展覧会

MAMプロジェクト034:ソニア・ボイス

2025.12.3(水)~ 2026.3.29(日)

「MAMプロジェクト034:ソニア・ボイス」では、多様なジャンルで作品を制作する英国のアーティスト、ソニア・ボイスのインスタレーション作品《ディボーショナル・ウォールペーパー・アンド・プラカード》(2008-2020年)を紹介します。本展は、ボイスにとって日本初個展となります。

ロンドンにて、ガイアナとバルバドス出身の両親のもとに生まれたボイスは、1980年代初頭に英国のブラック・アーツ・ムーブメントの中心的存在として頭角を現しました。その実践は、映像、写真、ドローイング、サウンド、インスタレーションなど多岐にわたり、ディアスポラ(離散移民)の経験を作品で表現し、他者との協働による制作の可能性を探っています。
本展では、進行中の「ディボーショナル」シリーズの中で最も大規模なバージョンである《ディボーショナル・ウォールペーパー・アンド・プラカード》に焦点を当てます。本シリーズは1999年、ボイスと地域社会の女性の生活向上に努めた黒人女性グループであるリバプール・ブラック・シスターズとの協働をきっかけに始まりました。参加者に初めて購入したレコードを思い出してもらい、またブラック・ブリティッシュの女性歌手の名前を挙げるワークショップを行いました。この体験が、見過ごされがちなブラック・ブリティッシュの女性パフォーマーたちを称え、その背景や歴史を想起させる「生きたアーカイブ」を制作する動機となり、その後20年にわたり、ボイスは一般のひとびとから寄贈されたレコードや雑誌の表紙、記念品などを収集してきました。

2020年までに、これらの活動は、200人の黒人女性ミュージシャンの名前がびっしりと印刷された壁紙で構成される、展示空間全体を使ったインスタレーションへと発展しました。壁の前には、ボイスの広範なアーカイブから、写真や雑誌記事、その他幅広い資料を用いた100枚のプラカードが立てかけられています。

本作は、見過ごされてきた文化を掘り起こし、新たな知識を築くひとつの形として機能しています。日本では1960年代から、クラブやディスコを中心にジャズ、ソウル、R&Bといったブラック・ミュージックやブラック・カルチャーの人気が育まれてきました。ブラック・ブリティッシュの女性の声を集めた重要なアーカイブを日本で初めて紹介する本作は、そうした日本独自の音楽カルチャーとも繋がります。

この作品の参加型の精神は今も続いています。「ディボーショナル」シリーズは、鑑賞者自身がアーカイブの一部になり、作品が提示する物語や名前の証人として、それらを心に刻み、未来へと語り継いでいくことになります。アーカイブは鑑賞者が関わり、思いを巡らせ、その絶え間ない営みに携わることで、鑑賞者の心の中で生き続けていくのです。


ソニア・ボイス《ディボーショナル・ウォールペーパー・アンド・プラカード》
ソニア・ボイス
《ディボーショナル・ウォールペーパー・アンド・プラカード》
2008-2022年
プラカード100本、壁紙
サイズ可変
Courtesy: Manchester Art Gallery
展示風景:「ソニア・ボイス」展、マンチェスター・アート・ギャラリー(英国、マンチェスター)、2018年
撮影:Mike Pollard
© Sonia Boyce. All rights reserved, DACS & JASPAR 2025 G4025
ソニア・ボイス《ディボーショナル・ウォールペーパー・アンド・プラカード》(部分)
ソニア・ボイス
《ディボーショナル・ウォールペーパー・アンド・プラカード》(部分)
2008-2022年
プラカード100本、壁紙
サイズ可変
Courtesy: Manchester Art Gallery
展示風景:「ソニア・ボイス」展、マンチェスター・アート・ギャラリー(英国、マンチェスター)、2018年
撮影:Mike Pollard
© Sonia Boyce. All rights reserved, DACS & JASPAR 2025 G4025
ソニア・ボイス《ディボーショナル・ウォールペーパー&プラカード》
ソニア・ボイス
《ディボーショナル・ウォールペーパー・アンド・プラカード》
2008-2022年
プラカード100本、壁紙
サイズ可変
Courtesy: Manchester Art Gallery
展示風景:「ソニア・ボイス」展、マンチェスター・アート・ギャラリー(英国、マンチェスター)、2018年
撮影:Mike Pollard
© Sonia Boyce. All rights reserved, DACS & JASPAR 2025 G4025
展示風景:「ソニア・ボイス」展、マンチェスター・アート・ギャラリー、英国・マンチェスター、2018年
ソニア・ボイス
《ディボーショナル・ウォールペーパー・アンド・プラカード》(部分)
2008-2022年
プラカード100本、壁紙
サイズ可変
Courtesy: Manchester Art Gallery
展示風景:「ソニア・ボイス」展、マンチェスター・アート・ギャラリー(英国、マンチェスター)、2018年
撮影:Mike Pollard
© Sonia Boyce. All rights reserved, DACS & JASPAR 2025 G4025
基本情報
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MAMプロジェクト034 : ソニア・ボイス


撮影に関する注意事項

「MAMプロジェクト034 : ソニア・ボイス」では、作品の写真・動画撮影が可能です。
撮影の際は以下の注意事項を必ずご確認ください。

撮影に際して

  • 作品に触れないでください。
  • 他の鑑賞者の鑑賞を妨げるような撮影はご遠慮ください。
  • フラッシュの使用はご遠慮ください。
  • 三脚や自撮り棒の使用はご遠慮ください。
  • 動画撮影は1分以内に限ります。

撮影された写真/動画の利用に関して

  • 撮影された写真/動画は、非営利目的でのみ利用できます。営利目的には利用できませんのでご注意ください。
  • 撮影された写真/動画に変更を加えることはできません。
  • 上記写真/動画の使用条件はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で許諾されています。
    撮影した写真/動画をブログや写真共有サービスなどに利用する場合は、以下のとおり表示してください。

表記例

作家名・作品名:ソニア・ボイス《ディボーショナル・ウォールペーパー・アンド・プラカード》
この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。

※ クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの詳細や表示については、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのウェブサイトをご参照ください。
※撮影された写真/動画に来館者が写っている場合、その写真の公表にあたって写り込んだ方の肖像権に触れる場合がありますので、ご注意ください。


「MAMプロジェクト」とは?

「MAMプロジェクト」は、森美術館が世界各地のアーティストと実験的なプロジェクトを行うシリーズです。本展のための新作、パフォーマンスやワークショップなど、展覧会という形式に限定されない多様な現代アートのかたちを紹介します。

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