2010年12月16日(木)

既成概念を打ち破り発展するアートセンター、ル・コンソルシウム

フランスのブルゴーニュ地方の小都市ディジョンにあって「常に新しくあり続けるスペース」を目指し、その多彩な活動が世界的に知られる現代アートセンター、ル・コンソルシウム。10月29日(金)に開催した「アージェント・トーク」第5回では、ル・コンソルシウム共同ディレクターのフランク・ゴトロ氏、国際企画ディレクターのキム・ソンドゥク氏を招き、その活動の軌跡から美術館、アートセンターという現場がどうあるべきか伺いました。


左からキム・ソンドゥク氏、フランク・ゴドロ氏

ル・コンソルシウムは1977年に創設され、これまでに様々なアーティストの個展を開催してきました。なかでも1990年には、河原温(かわら おん) の作品をアルベルト・ジャコメッティ の彫刻作品と共に展示したことで注目され、その年のベスト・ショウと評されました。また、2007年に体感型の新作を発表した草間彌生の個展は、ル・コンソルシウムで開催後、約3年間世界各地を巡回。さらにマーク・レッキーの個展後の2008年には彼が英国でターナー賞を受賞するなど、人口約16万人の地方都市にありながら、ル・コンソルシウムはつねにアートセンターとして国際的に高い評価を得てきました。

ル・コンソルシウムの多岐に渡る活動にはアーティスト・フィルムの制作や出版活動も含まれます。レクチャーでは、会場で流す音楽を作曲家に制作依頼するなど、多様な芸術領域を横断し、アートセンターの"あるべき姿"を最大限に拡張した活動姿勢が紹介されました。また、ル・コンソルシウム以外の美術館や国際展でのキュレーションも行なっており、ヴァレンシア・ビエンナーレではプレス発表会を水族館で行ったことが話題になり、成功を収めたという例もあります。また、アートセンターは作品を収集しないのが一般的ですが、ル・コンソルシウムは活動の「足跡」として展示作品を収蔵することもあるということでした。


ル・コンソルシウムの興味深く、多彩な活動を次々と紹介する両氏

これらの活動の裏には、各プロジェクトを少数精鋭のチーム内やアーティストとの話し合いを重ねて進めていく体制と、明確な目的を持った上での積み重ねがあると感じられました。
「グローバル化の今、フランスはもはやアートの中心ではないかもしないけれど、地元の人に現代美術とは何かを伝えるために作品を制作・展示することは意義あることです」
「既成概念に捕らわれない発想で発展してきたル・コンソルシウムは、常に新しくあり続けるスペースを目指しています」
との両氏の発言が印象的でした。来年には坂茂の設計による新しいスペースに移動予定のル・コンソルシウム。今後の活動がますます楽しみな、現代アートの発信地と言えるでしょう。
 

<関連リンク>
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カテゴリー:03.活動レポート
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