本展の構成
1 思考の森
活動初期から現在計画中のものまで、藤本の100を超えるプロジェクトを紹介する大型インスタレーション《思考の森》。300㎡を超える空間で藤本建築の全貌を表現します。模型や素材、アイデアの断片であるオブジェなどが、藤本建築の3つの系譜に分類され年代順に配置されて、1つの「森」を構成します。3つの系譜とは、閉鎖的な境界線が外部に開かれる「ひらかれ かこわれ」、空間の用途や性質が曖昧で多義的な「未分化」、一つの建築が多くのパーツで構成される「たくさんのたくさん」で、藤本建築の根幹をなすものです。
2 軌跡の森—年表
倉方俊輔監修の下で制作された、藤本の活動の軌跡を総覧する年表です。東京大学を卒業した1994年から今後竣工予定のものまで藤本による96のプロジェクト、同時期に竣工した国内および日本人建築家による主要作品、国内外の建築業界や社会一般の出来事などが掲載されています。また、各時代に何を重視していたのか読み取れる藤本の言葉に加え、作品写真のスライドショー、本人のインタビュー映像も展示することで、藤本建築を歴史的文脈で読み解くことを試みます。

《ハンガリー音楽の家》
2021年
ブダペスト
撮影:イワン・バーン

《ハンガリー音楽の家》
2021年
ブダペスト
撮影:イワン・バーン

《ラルブル・ブラン(白い樹)》
2019年
フランス、モンペリエ
撮影:イワン・バーン

《ラルブル・ブラン(白い樹)》
2019年
フランス、モンペリエ
撮影:イワン・バーン
3 あわいの図書室
間(あわい)をコンセプトとするブックラウンジを、窓から景色の見える展示室に設けます。幅允孝が藤本建築から着想を得た5つのテーマ「森 自然と都市」「混沌と秩序」「大地の記憶」「重なり合う声」「未完の風景」により選んだ書籍40冊が1冊ずつ椅子に置かれ、椅子には本から抜粋された言葉が散りばめられます。読書に没頭したり、藤本が森のようだと評する都市風景を眺めながら休憩したりと、「本を読む/読まない」の「間」としての空間が立ち現れます。
4 ゆらめきの森
利用者や居住者の動きを表現したアニメーションを建築模型に投影し、建築そのものではなく人の動きに焦点を当てます。学生たちが集い、談話し、交流する《エコール・ポリテクニーク・ラーニングセンター》(2023年、フランス、サクレー)、家族が時に離れ時に一緒に過ごす《T house》(2005年、群馬)、子どもたちがあちこちで遊び回り、斜面を登り下りする《UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店》(2020年、神奈川)など藤本の5つのプロジェクトを建築図面と共に紹介します。
5 開かれた円環
2025年大阪・関西万博のシンボルで世界最大の木造建築物《大屋根リング》(2025年)の5分の1部分模型(高さ4m超)を中心に、構想段階のスケッチや記録写真、リングで使用された日本の伝統的な貫(ぬき)接合技術を紹介するモックアップ、藤本のインタビュー映像などによって、リングを様々な角度から掘り下げます。また求心性と発散性を同時に併せ持ち、分断を超えたつながりを象徴する「開かれた円環」というコンセプトに焦点を当て、《ハンガリー音楽の家》など関連する12プロジェクトの模型を展示します。
6 ぬいぐるみたちの森のざわめき
《ラルブル・ブラン(白い樹)》、《太宰府天満宮 仮殿》(2023年、福岡)など、藤本が手がけた9つの建築がぬいぐるみとなり対話をするインスタレーション。明るく話好き、寡黙で真面目などの性格が設定された建築のぬいぐるみたちは、お互いについてのユーモラスな会話を行います。会話からは、各プロジェクトの特徴やそれらが設計された背景などを知ることができます。また、藤本によるスケッチも多数展示されます。


7 たくさんの ひとつの 森
藤本が2024年にコンペで選出され、基本設計を手掛けている音楽ホール兼震災メモリアル《仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設》を紹介。建物の構造が体感できる15分の1の大型吊模型を中心に、テーマ「たくさんの/ ひとつの響き」が具現化された設計プロセスを見せる模型や資料を展示。また「ばらばらであり ひとつであり」というコンセプトに基づいて設計されたプロジェクトの模型と藤本のインタビュー映像、さらに70点の主要プロジェクトのコンセプト・ドローイングにより藤本建築を複合的に紹介します。

2031年竣工予定
宮城
© Sou Fujimoto Architects

2031年竣工予定
宮城
© Sou Fujimoto Architects
8 未来の森 原初の森—共鳴都市 2025
この未来都市の提案は、藤本壮介と宮田裕章によって考案されました。模型と映像で表現される、大小様々な球体状の構造体が複雑に組み合わさった未来都市は、全体で高さ500m程度の範囲に収まります。そこでは、住宅、学校、オフィスといった都市生活に必要なものが備わっています。立体的に組み合わされた無数の球体群は、「森」と同様、絶対的な中心を持たず多方向に開かれ、人々が複層的に関係を構築する新たなコミュニティ形成が意図されています。